未来ビジネス倉庫

新しいテクノロジーから生じる、世の中に感動と便利を提供するサービスを紹介するメディア

お金に関する不安や悩みをテクノロジーで解決する
世界に通用するサービスをユーザーとともに

Money Forward

あらゆる人にとって、上手なお金の管理は日々の大切なテーマです。でも、「手持ちと貯金を合わせていくらあるのか?」「何にいくら使っているのか?」ということすら、ちゃんと把握できている人は多くありません。株式会社マネーフォワードは、こうした個人のお金の問題を、テクノロジーで解決することをミッションに2012年に創業し、個人向けの自動家計簿・資産管理サービス「マネーフォワード」や、法人向けのSaaSプラットフォーム「MFクラウドシリーズ」などを展開しています。代表取締役社長 CEOの辻 庸介氏に、同社のサービス着想時のきっかけから2030年の未来ビジョンまで幅広くお話いただきました。

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――創業からわずか6年で、フィンテック分野における国内最大級のクラウドサービス・プロバイダーに成長されました。サービスの着想から開発(実現)フェーズを経て、ユーザーの獲得・拡大フェーズまでが非常にスムーズのように見受けられます。

辻:私たちは「お金と前向きに向き合い、可能性を広げることができる」サービスを提供することにより、ユーザーの人生を飛躍的に豊かにすることを目指しています。法人、個人にかかわらずお金は大事ですが、その管理には悩みが付きものです。例えば、個人なら「今いくら持っていて、毎月どれくらい使っているか」を正確に把握している人はなかなかいません。このようなことがお金に関するモヤモヤした不安や悩みにつながり、人生を豊かにする障害になっています。この不安や悩みをテクノロジーで解決する、しかも自動で楽にできる仕組みを作ろうというのが、当社の理念です。この理念が広く受け入れられたことが、着想フェーズから開発フェーズ、ユーザーの獲得・拡大フェーズへのシフトをスムーズにしていると感じています。
現在、「マネーフォワード」をはじめとしたPFM(パーソナル・ファイナンシャル・マネジメント)サービスの利用登録者は約600万人(2018年1月現在)に達しています。また「MFクラウドシリーズ」もサービスのラインナップが充実してきており、会計事務所が顧問先に導入したいクラウド型会計ソフトNo.1に選ばれています。

「マネーフォワード」利用者推移
<「マネーフォワード」利用者数推移>

ユーザーの声がサービス開発の原点

――そもそも「個人のお金の悩みを解消する」というテーマに着眼したきっかけは、何でしょう。

辻:創業前はマネックス証券に在籍していたのですが、この時、松本 大社長が言われていた「資本市場の民主化」や「機関投資家レベルの商品を個人投資家に」といったお話に非常に共感を覚えたのです。しかし世のユーザー向けの金融サービスには、これといったものがまだありませんでした。それならば自分で作ろうと、マネーフォワードを創業したのです。
こう言うと初めから明確なビジョンがあったようですが、それが現在のようなサービスになるというイメージまではありませんでした。ただ、お金に関するカスタマーペインがあって、そのペインを解消できるサービスを作れば受け入れられるという確信は持っていました。
この「カスタマーペインを本当に解消できるか」という点が、何より重要だと思っています。よく言われますが、「Nice to have=あったらいいね」というサービスは結局消えていくんです。「Must Have=なければ困る」サービスでないと使ってもらえない。それを作れるかどうかが、成否の分かれ目だと思っています。最初は個人向けサービスだけだったのを法人へ広げたきっかけも、ユーザーのアンケートを見て「やった方がいい」と気付いたからです。常にユーザーの声がサービス開発の原点になっています。

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大切なのは、
組織のメンバーの一人一人が
価値観を理解し、共感し、主体的に動くこと

――新しい分野やビジネスを立ち上げるときの原動力となるのは何ですか。また、経営者のリーダーシップはどうあるべきでしょう。

辻:根本は「こういうサービスがあった方がいい」「こういうサービスを作りたい」という意思や欲求ですが、私はそれを実践する際に3つのバリュー「User Focus」「Technology Driven」「Fairness」を大事にしています。まずユーザーにフォーカスして、ふさわしいテクノロジーを使って開発し、全ての人に対してフェアに提供するといった基本姿勢です。
一方で、経営者や創業者というのは、会社内の一つの役割に過ぎないと思っています。むしろ大切なのは、こうした価値観を組織のメンバーの一人一人が理解し、共感し、その実現に向けて主体的に動いていくことです。私はたまたま経営が得意だから経営を担当しているだけで、プロダクトを開発したりデザインしたりというのは自分ではできません。それぞれの役割分担でメンバー各々がやるべきことをやっていれば、その会社は強くなれると思います。

当社には今、社員が250名くらいいますが、フラットな組織で、お互いに言いたいことを言い合える環境です。立場は関係なく本質的に正しければ淡々と実行に移しています。私の意見も否定されることもあります(笑)。だいたい正しい意見というのは、誰でも言っていることの3割もあればいい方で、社長の意見が絶対だと言い出したらその組織は危なくなります。みんなが率直な意見を言ってくれる会社は、経営が健全だと思いますね。

作り手側の妄想は捨て、
ユーザーの動きや声に謙虚に向き合う

――新しいアイディアやコンセプトを、実際のサービスに作り上げていく過程で大切なポイントはなんでしょう。

辻:新しいサービスを開発するときは、KPIを1個に絞っています。あれもこれもではなく「この1点だけまず改善しよう」と決めて、あとはひたすら改善と、本当に課題解決に向かって進んでいるのかを検証するPDCA サイクルをどれくらい速く回せるかです。
このとき「ユーザーはこうあるべきだ」とか「こう動くはずである」とかいった思い込みはほぼ作り手側の妄想なので、それらは全て捨ててユーザーの動きや声に対して謙虚に向き合わなくてはいけません。
また、サービスの幅を広げていく時には、ある程度シナジー効果の高いところから手を付けていきます。例えば、「マネーフォワード」で個人のお金の見える化ができたので、次はお金が自動で貯まる仕組みを作ろうということで、自動貯金アプリ「しらたま」ができたとか、前の成果が次のシーズ(種)になるように広げていっています。
さらに、自社にないリソースを持っている企業とのコラボレーションも考えるべきです。例えば2016年に国内で初めて提供を開始した資金調達サービス「MFクラウドファイナンス」では、GMOペイメントゲートウェイのグループ会社であるGMOイプシロンが提供する「請求書データと会計データなどを活用したレンディング」を採用しました。

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――最後に、2030年時点で会社組織やお客様はどうなっているのか。マネーフォワードの未来ビジョンをお聞かせください。

辻:フィンテック領域では国内で最初に上場を実現したことを活かし、発展のスピードを早めて個人や法人全ての人々のお金のプラットフォームになれるようがんばっていきます。

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<マネーフォワード 今後の成長戦略>

また、日本だけでなく、今後の成長センターとなる東南アジアをはじめ、世界に通用するサービスと企業を作っていきたい。高度成長期のソニーやトヨタのような会社があって今の日本があるように、私たちの世代もそういう世界に通用するイノベーションを提供できる会社を作っていかなくてはいけないと考えています。願わくば、私たちがその1社になっていれば嬉しいと思っています。

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辻 庸介

プロフィール:
株式会社マネーフォワード
代表取締役社長 CEO
辻 庸介 氏

京都大学農学部を卒業後、ペンシルバニア大学ウォートン校MBA修了。ソニー株式会社、マネックス証券株式会社を経て、2012年に株式会社マネーフォワードを設立。新経済連盟の幹事、経済産業省FinTech検討会合の委員も務める。
2016年、Forbes JAPAN「日本のベスト起業家ランキング」にランクイン。また、日経ビジネス「2017年日本に最も影響を与える100人」に選出される。2018年1月、「第43回経済界大賞」ベンチャー経営者賞を受賞。

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協力:JBpress