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利息ゼロの給与先払いサービス
「アーニン(earnin)」が
チップの収益だけで成り立つ理由

~海外Fintechベンチャー紹介(アメリカ)~

給与先払いサービス「アーニン(earnin)」がアメリカで急成長している。利息はゼロ、ユーザーからのチップだけを収益源とする独自のビジネスモデルだ。アメリカ固有の文化的背景もあるとはいえ、アーニンはユーザー体験の設計がきわめて上手い。文化や価値観を起点にしてビジネスを組み立てる手法は、ここ日本でも参考にできそうだ。

ターゲットはペイデイ・ローン利用者に留まらない

アメリカの給料日は一般的に2週間に1度。そう聞いて羨ましがる人もいるかもしれないが、アメリカの低所得者層の中には、2週間ごとであっても次の給料日までお金が足りないという人も多い。そのような場合にどうするかというと、一つは、「ペイデイ・ローン」という消費者金融を利用する。ペイデイ・ローン(次の給料を担保に貸し出される小口の短期ローン)店舗は街中の至るところにあり、利用者は1000万人以上にものぼるという。一方で、利率が年率数百パーセントと非常に高いため、ペイデイ・ローンを利用せずに、勤務先からの前借りや親族からの資金融通で、給料日まで乗り切る人々や、どこからも資金の借入ができず、給料日まで耐える人々もいる。

こうした中、給料日前の資金繰りで悩みを抱えるあらゆる人々のための新しいサービス、アーニンが誕生した。アーニンは、ユーザーはスマートフォンのアプリ上で申込みを行うと、原則初回は全員に給与の先払いが行われる。ユニークなのはユーザーから金利やフィーを徴収しないということだ。代わりにユーザーの任意による「チップ」が収入源となる。

言わずもがな、アメリカではレストランでもホテルでもサービスを受けたらチップを支払う文化が根付いている。「相手に申し訳ないから」という義務感ではなく、彼らは当たり前のようにチップを払う。その意味で、チップを収益源とするアーニンは非常にアメリカらしいサービスだといえるだろう。しかし同時に多くの人はこう思うはずだ。「本当にチップだけでビジネスが成り立つのかーー?」と。どのようにしてアーニンのビジネスが成立しているのか、紹介していこう。

チップでつながるコミュニティ

アーニンの仕組みをもう少し詳細に見てみよう。アーニンはアプリ経由で勤務先などのユーザー情報を取得するとともに、各ユーザーの銀行口座にダイレクトにアクセスし、入出金の状況から資金繰りの健全性をチェックする。さらにGPSからユーザーの出勤状況も推定し、各ユーザープロファイルをAIで分析して先払いの上限額を設定する。

そしてユーザーは、先払いを申請する際にサービスに対するチップ額を選択することになる。チップというからには任意であり、「払わない」という選択肢ももちろんありえるのだが、ほぼ全てのユーザーが数ドルのチップを選択しているようだ。

なぜチップという性善説の収益モデルが成立するのだろうか。そもそもチップ文化が根付いているという背景も大きいが、アーニンはチップを支払うUI・UX設計も非常に巧みなのだ。アーニンがアプリ上で体現しているのは、チップでお互いが助け合うコミュニティだ。アーニンでは「Pay it Forward(次の人へ渡そう)」というコミュニティを形成しており、トップ画面ではチップを支払ったユーザー名が表示され、出金時には自分のトップ不足分を補ってくれたユーザーが表示される。チップは出金額に対する相場があり、それに満たない場合は、チップを多く払った「誰か」によって不足分が補填されたと伝えられる。だからあなたも、次の誰かにチップをつないでいこうーーというわけだ。

もともとのチップ文化に加え、キリスト教の教えにある「汝の隣人を愛せよ」という価値観も後押ししているのかもしれない。アメリカの人々は知らない誰かを助けたり、寄付など人のためにお金を出すことをあまり厭わない傾向もある。結局出ていくお金としては、ペイデイ・ローンの金利とあまり変わらないかもしれないが、チップであれば気持ちよくお金を払うことができるのだ。


引用:「Earnin」WEBサイトより(https://www.earnin.com/

文化や価値観からビジネスを考える

アーニンは2014年にサンフランシスコで生まれ、主にSNS上の広告とクチコミでユーザーを開拓してきた。アメリカではテレビのニュースやメディアで取り上げられる機会も増えてきており、アーニンの利用状況を公開するYouTuberなどもあらわれ、急速に市民権を得つつあるところだ。ペイデイ・ローンのマーケット規模を考えると、これからの成長余地も非常に大きい。

しかし、アーニンのビジネスモデルが日本でも機能するかどうかは未知数だ。チップの文化がない国では難しいと考えるべきかもしれない。それでも、アーニンのサービス設計の巧みさには学ぶべきところが多い。アーニンの成功要因の一つは、アメリカの文化や価値観に上手くフィットしており、ユーザーが気持ちよくチップを払える仕組みを体現したことだ。同じ金額を払うにしても、強制された利息として払うか、善意のチップとして払うかーー。両者のユーザー体験は正反対と言っていいほど違う。

もう一点、アーニンの成功から私たちが得られる学びとしては、その国の文化や価値観、精神性からビジネスを組み立てることの有効性だ。日本に関していえば、日本人特有の精神性や、若い人たちを中心としたライフスタイル・価値観の変化といった事柄にも、新規ビジネスのアイデアは隠れているはずだ。普段とは違う目線で身の回りを眺めてみると、新鮮な発見があるかもしれない。

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