未来ビジネス倉庫

新しいテクノロジーから生じる、世の中に感動と便利を提供するサービスを紹介するメディア

2018年から2019年へ
日本の決済シーンの動向を読む

われわれの生活に欠かせない決済の仕組みがデジタルテクノロジーによって急速に進化、キャッシュレスへと向かっている。この動きはWeb、リアル店舗共通のものであり、よりスマートでより便利な購買体験(UX)が可能になってきた。中でも2018年の変化は大きく、始まった2019年を展望する意味でも大きな意味を持っている。振り返りを含めて今年のペイメント回りを概観してみたい。


 2015年時点の各国のキャッシュレス決済の比率は、韓国が89.1%、中国が60.0%、カナダ、イギリス、オーストラリアも50%を超えるのに比べ日本は18.4%と低く、政府も危機感を募らせている(※1)。ただ、昨年からの動きを見ると、大きなブレークスルーの兆しがある。

(※1)出所:経済産業省『キャッシュレス・ビジョン』より

キャッシュレス・決済

 4月、経済産業省が「キャッシュレス・ビジョン」発表。日本のキャッシュレス化をさらに推進する強いメッセージをマーケットに送った。
 6月、2017年5月に「銀行法等の一部を改正する法律」が成立し、改正銀行法として、2018年6月から施行されている。
 11月、2025年に大阪で万国博覧会開催が決定。観光立国はもとより、決済のキャッシュレス化に向け、新たなマイルストーンとして意識されるようになった。
 12月、インバウンドが初の3000万人突破(※2)。2018年の訪日外国人旅行消費額は4兆5,064億円だったこともあり(※3)、インバウンドが日本の経済に大きな影響力を持っていることを改めて意識させた。

(※2)出所:日本政府観光局(JNTO) 月別・年別統計データ(訪日外国人・出国日本人)より

(※3)出所:観光庁 訪日外国人消費動向調査 2018年全国調査結果より

他にも挙げればきりがないが、2018年のトピックスと言えば、スマホ決済サービスが続々と登場し、一気に普及したことをおいて他にない。各社各様のサービスはあるが、当社だけで見ても、2016年に横浜銀行と共同で開発した、スマホアプリから即時に銀行口座の引き落としなどによる支払いができるサービス「銀行Pay」の提供先が広がりをみせている。そして同じく銀行Payの仕組みを使って東京急行電鉄(東急電鉄)の券売機から現金引き出しなどを行える「券売機によるキャッシュアウト・サービス」を、2019年春から東急線各駅でのサービス提供開始を目標に取り組むと発表した(東急電鉄の他、横浜銀行・ゆうちょ銀行との共同事業として実現)。

このように、スマートフォンを使った決済は続々と取り組む企業が現れ、利用者に利便性やインセンティブを提供する一方、顧客囲い込みの施策としてスタンダード化しつつあり、キャッシュレス決済に拍車をかけている。2019年も引き続き銀行系や流通系の決済サービスリリースが目白押しだ。

イギリス、キャッシュレス、地下鉄

さて、わが国はクレジットカードを中心に電子マネーが一定の割合を示すキャッシュレス決済の勢力地図だが、世界を見回すと、キャッシュレス先進国には別の類型もある。こうした先行事例から、日本のこの先のペイメント事情を読むこともできそうだ。

一つのパターンと見ることができるのは、キャッシュレス決済が日本よりも普及していると言われているイギリスだ。ある銀行が発行するVISAのデビットカードでは、地下鉄の運賃決済が可能で、かざすだけでゲートが開く。イギリスでは金融機関が口座管理から決済までを行うため、日本の交通系の電子マネーがチャージの必要な「おさいふ」だとすれば、こちらは通帳そのもので決済する感覚だ。ロンドン市内では、逆に「現金不可」の店舗も増えているという。

スウェーデンも個別の進化を見せている。もともと国民番号に金融情報をひも付けるインフラがあるスウェーデンゆえに、世界のトップランナーといえる「オンライン後払い」サービス企業を生み出した国柄だ。人工知能(AI)・決済・与信を融合させた高度なフィンテックを駆使し、カードが普及していないエリアでも信用をベースにした新しい支払い手段を提供し、世界に進出している。

2019年、日本は2020年の東京五輪に向けてキャッシュレス化が大きく進んでいくだろう。前述したイギリスでは、2012年のロンドン五輪を転機に現金利用率が下がっていき、2017年には現金とデビットカードの利用率が逆転している。(※4)
さらに、モバイル環境に決定的な変化をもたらす5Gの普及や、10月に控える消費税の増税など、2019年は市場に大きな影響を及ぼす可能性のあるファクターも控えている。予断は許さないが、これからも業界の動向をつぶさに見ていきたい。

(※4)出所:UK Payment Markets Summary 2018より

※本コンテンツ内記事・画像などの著作権は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社に属します。