
企業間(BtoB)決済の主流である銀行振込は、長年の商習慣や信頼関係に支えられた重要な手段です。一方で、資金繰りや業務負担といった実務上の課題から、新たな決済手段を模索する動きも広がっています。
そのひとつが、GMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)が提供する「請求書カード払い byGMO」です。取引の支払いにカードを活用するこの仕組みは、決済業務の柔軟性を高め、現場の負担軽減や資金繰りの悩みに応える選択肢となります。
本記事では、「請求書カード払い」の仕組みや特徴、導入によって見えてきたBtoB決済の新たな姿について、サービス開発のキーパーソン今野への取材をもとに紐解いていきます。あわせて、現場で活躍するメンバーの姿と、今後この領域を共にけん引していただきたい人物像についても聞きました。
GMOペイメントゲートウェイ
インダストリーソリューション本部
イノベーション戦略統括部 戦略事業営業部 部長
今野 隆太郎
メガバンクに新卒で入行し、法人営業や企業審査を担当。地域REITの組成や、情報管理業務の簡素化に向けた社内構造改革に携わる。
2022年にGMOペイメントゲートウェイへ入社。BtoC・BtoB決済領域における事業開発および企画営業を推進。
企業間決済の現状と課題
-- まずは、企業間(BtoB)決済市場の規模感と、クレジットカード払いの現状について教えてください。
BtoB決済市場は非常に大きく、その規模は推定約1,000兆円といわれています。しかし、BtoB領域でキャッシュレス決済が導入されているのはわずか10兆円程度と、全体の1割にも満たない水準です。BtoC領域で約4割のキャッシュレス化が実現していることを考えると、この差は大きいと感じています。
※参考:経済産業省「令和5年度 商取引・サービス環境の適正化に係る事業(クレジットカードのインターチェンジフィーの標準料率公開に伴うモニタリング調査及び加盟店負担低減・B2Bキャッシュレス取引拡大に向けた調査事業)」
※参考:内閣府「国民経済計算」、一般社団法人クレジット協会「日本のクレジット統計」、日本銀行「決済動向」、一般社団法人キャッシュレス推進協議会「コード決済利用動向調査」
-- BtoB決済でキャッシュレス化、特にBtoCでは一般的なクレジットカード払いが進まない要因はどのような点にあるのでしょうか。
▲一般的なカード決済モデル
1つは、上図の③で発生する売り手側のカード手数料負担です。一般的にカード手数料は3%程度ですが、これを売り手が負担するのは、商品やサービスを3%値引きして売っているのと同じ感覚です。銀行振込で済んでいた取引に、あえて3%の手数料を支払うインセンティブがないと感じる企業が多いのも事実としてあります。
もう1つは、支払う側の仕組みの問題です。先ほど、BtoB決済の市場規模が1,000兆円とお話ししましたが、そのうち7割から8割で銀行振込が採用されています。特に大企業や中堅企業では、社内規定によって支払いまでのフローが厳格に定められていますし、そういったスタティックな支払いフローが好まれているという現状もあります。そのため、簡単に新しい決済手段に移行できないことも、キャッシュレス化が進まない要因に挙げられます。
参考記事:「事業者が理解すべきクレジットカード決済の仕組み【各社の役割と関係性】」
-- 一般的な銀行振込による支払いスキームが抱える課題にはどのようなものがありますか。
まず、挙げられるのが業務効率の問題です。先ほどお伝えしたように、日本企業では支払いまでのフローが厳格に組まれています。ところがこれが、無駄な業務やコストを生む要因ともなっています。人材不足が叫ばれる今こそ、業務効率の見直しは不可欠だと考えています。
もう一つ、資金繰りは買い手(バイヤー)と売り手(サプライヤー)の双方にとって大きな課題です。まず、取引慣習として「月末締め・翌月末払い」「月末締め・翌々月末払い」といった長い支払いサイトが続くため、売り手側は資金回収に時間がかかり、資金繰りに大きな負担を強いられている現状があります。特に建設業や飲食業、コンサル業など、売り手側が先行して仕入代金や外注費の支払いを行う必要がある業種では、資金繰りは非常に大きな問題となっています。
一方、買い手側では急な仕入れ増などで運転資金が必要になっても、銀行など金融機関からの短期の資金調達が十分に受けられないケースが少なくありません。私たちはこうした了以面の課題を解消するため、決済フローに新たなオプションを提供し、資金がスムーズに循環する仕組みづくりを進めています。
GMO‑PGのBtoB領域における資金面のサポートサービスポートフォリオ
--決済手段だけではない資金繰りの課題に対して、どのようなソリューションを提供しているのでしょうか?
GMO-PGでは、BtoB領域において、買い手と売り手双方の資金繰りを改善する資金面のサポートサービスポートフォリオを用意しています。具体的には、買い手向けに「請求書カード払い byGMO」「GMO広告費後払いサービス」「GMO BtoB支払保証」といったサービスを、売り手向けには「GMO BtoB早払い(ファクタリング)」「GMO-PGトランザクションレンディング」「GMO BtoB売掛保証」に加え、グループ会社のGMOペイメントサービス(以下、GMO-PS)が「GMO掛け払い」を展開しています。
請求書カード払い byGMO | GMO BtoB支払保証 | GMO広告費後払いサービス | |
---|---|---|---|
従来フロー | 銀行振込 | 取引先から保証金・前払い要求 | Web広告費前払い/30日サイト |
変更点 | カード決済(AMEX、Visa、Mastercard)で、支払サイトをカード締め+引落日まで延長 | GMO‑PGが買掛金を保証 | 最長6か月後に請求書払い |
立替・保証スキーム | GMO-PGが立替払い | 債務不履行時、GMO‑PGが買掛金を売り手に支払う | GMO‑PGが広告費を立替 |
主なメリット | ・振込手数料ゼロ ・カードポイント付与 ・資金繰り猶予 最大60日 |
・保証金不要 ・仕入機会拡大 ・交渉工数削減 |
・広告運用→効果検証→支払いの順でCF最適化 ・限度額問題解消 |
GMO BtoB早払い(ファクタリング) | GMO-PG トランザクションレンディング | GMO BtoB売掛保証 | GMO掛け払い(グループ会社) | |
---|---|---|---|---|
従来フロー | 売掛金入金まで30~60日 | 銀行融資 | 未回収リスクを自社負担 | 自社で与信・請求・回収 |
変更点 | 最短2営業日で資金化 | 売上連動型オンライン融資 | 保証付き取引 | 後払い+請求業務丸ごと代行 |
立替・保証スキーム | GMO‑PGが売掛債権買い取り | GMO‑PGが決済データで審査・貸付 | 取引先倒産・遅延時にGMO‑PGが保証 | GMO‑PSが債権譲渡を受け請求・回収・保証 |
主なメリット | ・即時キャッシュ化 ・保証人 ・担保不要 |
・担保 ・保証人不要 ・最短3営業日実行 ・返済は売上と相殺 |
・貸倒防止 ・与信業務削減 ・保証料0.1%~ |
・入金確定の前倒し ・請求/督促工数ゼロ ・未回収リスクなし |
こうしたサービスを企業のフェーズや業種に合わせ、複合的に導入することで、キャッシュフロー安定化と業務効率化を実現できます。決済業界のリーディングカンパニーとして、最適な決済戦略を提案できる点も、私たちの強みといえます。
「請求書カード払い byGMO」で資金繰り体制を刷新
-- BtoB決済サービスの中でも特に注目度の高い「請求書カード払い」について教えてください。
請求書カード払いは、その名の通り、これまで銀行振込で支払っていた請求書をカードで支払えるようにするサービスです。従来のBtoB決済では、売り手が発行する請求書に記載された銀行口座に振り込むのが一般的でしたが、そこに、下図のように弊社が介在することで、どんな請求書でもカードで決済できる仕組みを実現しました。
▲「請求書カード払い byGMO」のカード決済モデル
-- サービスの特徴や他社との違いについて教えてください。
カード会社のアメリカン・エキスプレス(AMEX)、ユーシーカード(Visa、Mastercard)などと連携し、ほぼすべてのカードに対応しているのが特徴です。特にアメックスは日本の中小企業での利用比率が高く、ビジネスカード市場において国内随一の流通額を確保しています。そのアメックス社とパートナーシップを結んでいる点は、弊社の大きな強みといえます。
また、これまで10万件以上の売掛債権の審査実績で培ったGMO-PG独自のノウハウを活かし、不正取引の防止にも注力しています。特に与信枠の現金化をはじめ、実体のない企業による架空取引や循環取引の発生を未然に防ぐ体制を構築しているのも特徴です。
-- 導入のメリットにはどのような点がありますか?
まず挙げられるのが、資金繰り改善に大きく貢献できる点です。銀行からの借入金に頼らず、カード決済によって支払いを最大60日後ろ倒しにできるため、キャッシュフローに余裕を持たせることが可能です。加えて、複数の請求書支払いをカード明細で一括管理できるため、決済業務の効率化にも役立ちます。
また、法人カード利用により、カードのポイントを獲得できる点も大きな特徴です。
-- 導入までの流れやサポート体制についてお聞かせください。
請求書情報を専用サイトでご登録をいただければ、弊社で審査を実施し、スムーズに利用を開始できます。
現在、APIを通じて他社の業務アプリケーションと弊社の決済システムをシームレスに接続する仕組みを積極的に推進しています。これにより、企業は日々利用されている業務アプリケーション内で決済手段を選択するだけで、自動的に決済処理を完了することができます。また今後は、SaaS事業者との連携をさらに強化し、業種を問わずご利用いただける汎用性の高い決済環境を構築してまいります。
AMEX専用サイト:https://www.americanexpress.com/ja-jp/services/invoice-pay/
UC専用サイト:https://www2.uccard.co.jp/uc/services/seikyu/
ライフカード専用サイト:https://www.lifecard.co.jp/lp/bpsp_gmo/
振込中心時代から選択肢のあるBtoB決済新常識へ
--請求書カード払いを中心とした決済サービスをより広く展開することで、企業の皆さまにどのような体験を提供していきたいと考えていますか?
企業間(BtoB)決済において主流だった銀行振込を中心とする仕組みに加え、新たな選択肢を提供することで資金繰りの安定や業務の効率化を支援したいと考えています。特に、中小企業では、現在の決済手段だけでは資金繰りや業務効率に課題を抱えるケースが多く見られます。こうした状況の中で、私たちのサービスを導入いただくことで、煩雑な事務作業の負担を軽減し、本質的な業務や経営判断により多くの時間を割いていただける環境を提供することを目指しています。
-- 大企業や中堅企業にとっても、メリットは大きいのでしょうか。
もちろんです。大企業のお客様には、支払日を2か月以上延ばすような柔軟なスキームや、カード手数料を抑えたプランの提供など、企業規模や状況に合わせた最適な仕組みを用意しています。借入金の残高を期末に圧縮し、外部格付けの改善や調達コストの削減を支援することで、経営基盤の強化を後押しするソリューションとしてご活用いただけると考えています。
-- BtoB決済を取り巻く環境は、今後どのように変化していくとお考えですか?その中で、GMO-PGが果たしていく役割についてもお聞かせください。
これまでのBtoB決済は、銀行振込を中心とした仕組みが主流でしたが、今後は資金繰りの柔軟性や業務効率の向上といった観点から、企業がより自社に合った決済手段を選ぶ動きが進んでいくと考えています。
私たちは、「請求書カード払い」をはじめとしたサービスを通じて、企業の支払いに関わる選択肢を広げ、経営の自由度を高める一助となることを目指しています。今後も企業ごとの課題やニーズに応じた決済手段を提案し、BtoB決済のあり方に新たな選択肢を加えていけるよう取り組んでいきたいと思っています。
"金融×データ×SaaS"で挑む仲間を募集
-- 現在、一緒に働く人材の募集を積極的に行っていると伺いました。具体的にどのようなポジション(職種や役割)の採用を強化されているのでしょうか。
私たちは、単なる金融サービスという枠を超えて、金融の仕組みとデータ活用、そしてSaaSの柔軟性が一体となったサービスを展開しています。だからこそ、営業、企画、審査、運用など、幅広い業務を担当できる人材を特に求めています。今は事業全体が大きな成長フェーズにあるので、サービスの作り込みから運用まで、一緒に考えて動かしていける仲間が必要です。
具体的には、事業開発をリードするマネジメント層から、マネジメント候補となり得る中間層から新卒の方まで、幅広い層を対象に積極的に採用を行っています。
-- どのようなバックグラウンドやスキルを持つ人材と一緒に働きたいと考えていますか?
金融業界の経験や知識はもちろん活かせますし、システム開発やプロジェクトマネジメントといった経験もあるに越したことはありません。しかし、技術や業界知識以上に、BtoB決済という前人未到の領域に挑戦する気概を持って、社会の仕組みを変えていくという志を持った方と一緒に働きたいと考えています。
-- GMO-PGの特徴として、「金融・決済系の個人情報を扱う守り」と「柔軟なシステム開発等の攻め」を両立するサービス開発文化があると伺いました。具体的にどのようなものなのでしょうか。
私たちには、金融関連サービスを展開する事業者として個人情報や決済データなどの機密情報を扱う責任があります。そのため、システムの堅牢性は確実に維持していく必要があると考えていますし、セキュリティに対する意識も常に高く持って開発を進めています。
一方で、これまでにない新しい体験をお客様に提供するという目的を達成するため、よりスピーディーで柔軟性の高い開発が求められているのも特徴です。
セキュリティや堅牢性を担保しながら、より素早く柔軟な開発が求められる点は、他社では経験できない要素だと考えています。
-- 今、このタイミングでジョインすることで、どのような面白さや、経験を得られると考えていますか?
現在のBtoB決済市場は、今後の大きな成長が期待される段階にあります。業界全体としても、メガバンクをはじめとする大手金融機関ですら、今後の戦略やサービス展開の模索を続けている状況です。このような環境の中で、新たなビジネスを自らの手で創出し、お客様に価値を提供しながら企業の成長に寄与できることは、大きなやりがいであると考えています。
私たちの部署では特に新規ビジネスの立ち上げを数多く手がけており、高い成長目標を掲げています。数字目標を達成することによる達成感はもちろんのこと、ゼロからサービスを構築していくプロセスそのものも魅力だと感じています。
また、当部にはBtoC領域から転向し、BtoB決済サービスを立ち上げたメンバーも在籍しています。これまでの経験を基盤としながら、新たな挑戦ができる環境が整っている点も、非常に意義深いと感じています。
-- GMO-PG独自の風土などがあれば教えてください。
数字に対する強いこだわりが根付いている点が挙げられると思います。弊社はマーケットに対しても年平均25%の営業利益成長という目標を掲げており、それをしっかり達成するという意識が現場にも浸透しています。
また、営業と本部機能が同じフロアに集約されているため、部署間の垣根が低く、コミュニケーションが取りやすい環境が整っているのも特徴です。社長や副社長も同じフロアにいるので、現場で直接アドバイスや指導を受けられる機会が多いのも、弊社ならではだと思います。
-- 採用候補者のみなさまへメッセージをお願いします。
世の中にはまだまだキャッシュレス化が進んでいない分野が数多く存在しています。特にBtoB決済のキャッシュレス化は、前例の少ない挑戦です。私たちはこの領域で革新を起こし、企業やユーザーに新たな価値を届けることを目指しています。
もちろん、BtoC分野にキャッシュレス化が進んでいない領域があり、BtoB・BtoCともに課題は尽きません。これらを解決することで、より多くの人々に充実した時間や効率的な働き方を提供したいと考えています。
この想いに共感し、一緒に挑戦し続けていただける方に、ぜひ仲間として加わっていただきたいと考えています。共に新しい未来を切り拓いていきましょう。
「請求書カード払い byGMO」サービスページ
https://www.gmo-pg.com/service/invoicecardpay/
(by あなたのとなりに、決済を 編集チーム)
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