
「月1回」が当たり前とされてきた給与支払い。しかし、非正規雇用の増加、働き方の多様化、そしてスポットワークの急成長といった時代背景をうけ、この常識が今、塗り替えられつつあります。
企業の採用力強化や就業者満足度の向上など、企業経営において欠かせない選択肢となりつつある給与前払いサービス。今回はGMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)で給与前払いサービスを最前線で率いる根本に、給与の支払いにおける直近の変化や今後の可能性について聞きました。
参考記事:「給与前払いサービスとは?導入に向けた、仕組みやメリット、選定ポイントを紹介」
GMOペイメントゲートウェイ
企業価値創造戦略統括本部 給与Fintech事業部 部長
根本浩史
書籍・映像・ライフスタイル流通大手で宅配サブスクやECと共通ポイントを連動させて会員基盤を拡大し、オンラインと店舗を統合するポータルを構築してデジタル戦略をリード。さらに映画クリエイター支援や、スタートアップ支援のオープンイノベーションプログラムを立ち上げ、グループ横断DXを推進。
2024年4月より当社にて給与前払いサービス「即給 byGMO」の事業拡大を牽引。
3年前の約8倍。幅広い業種で導入が増える
- GMO-PGの給与前払いサービスの現状について教えてください
当社は、働いたその日、あるいは希望のタイミングで給与を受け取れる給与前払いサービス「即給 byGMO」を提供しています。これは、三井住友銀行とさくら情報システムが2007年から展開してきた給与前払事務代行サービス「即給」のアセットを活用し、当社の決済・送金ノウハウを組み合わせて2022年2月にサービス利用契約を承継したものです。提供開始以来、新規導入事業者数が順調に増え、、2025年7月時点で10,000社超、3年前の約10倍に達しました。導入業種は、人材派遣・警備・小売・飲食・サービスなど多岐にわたります。
- サービス開始後の就業者の利用状況はいかがですか?
給与前払いサービスはしばしば「前借り=借金」と誤解されますが、実際はすでに働いた分の給与を受け取る仕組みであり、金利も発生しません。
利用実態を見ると1回あたりの平均引き出し金額は1.5万円と無理のない範囲に収まり、カジュアルな金銭管理の一環として活用されています。
なぜ今「給与前払いサービス」が求められるのか
- 給与前払いサービスの注目が高まっている背景を教えてください。
日本は少子高齢化の進行により労働力不足が深刻化しています。総務省「情報通信白書(令和4年版)」によると、生産年齢人口は2021年に7,450万人から2030年には7,000万人、2040年には6,000万人を下回る見通しです。過去10年間で44歳以下の非正規雇用者数は150万人(8%)減少しており、より柔軟な働き方を求めるワーカーも増えています。
- 給与は月に1回払いであることに関して、就業者の方からはどのような声がありますか?
世界に目を向けると、米国ではわずか5%の企業が月払いを採用し、95%は週払い・隔週払いです。日本では企業側の運用から月払いが慣習化しており、就業者は「働いた報酬を遅れて受け取らなければならない」という状況があります。就業者からは「急な出費に対応しづらい」「いざという時は借金に頼らざるを得ない」といった声が多く、特にアルバイトや非正規雇用の方々にとって、生活の自由度と安定性を損なっています。
こうしたニーズに応えて誕生したのが、「即給 byGMO」などの給与前払いサービスです。
- スポットワークの拡大は給与支払いタイミングにどのように影響していますか?
スマホを使って仕事を探し、その日のうちに報酬を受け取るスポットワーク市場は急成長しており、スキマバイトの登録会員は1年半で900万人から約3,000万人規模※に増加しています。国内の非正規雇用を上回る規模で、前払いを経験した人が増えることで、給与受け取りタイミングに対する価値観は大きく変化しています。
※2025年2月時点。主要事業者の公表値等に基づく業界団体の推計(重複登録を含む)
就業者の離職を防ぎ新規採用を促進する―"日払い・週払い"を標準化
- 企業の課題には何があるのでしょうか
企業の経営課題は採用力の向上です。労働人口の減少に加え、アフターコロナやインバウンド増加に伴う労働需要が拡大したことにより、採用できる人材が不足しているのが現状です。
-そのような経営課題に対して、給与前払いサービス導入メリットはどのような点になるのでしょうか。
メリットとして挙げられるのは、人材の採用力向上が見込まれる点です。特に、小売、飲食、サービスなど、アルバイトやパートの就業者を多く受け入れている企業や、人材派遣、警備などの比較的短期に勤務される従業員が多い企業では、人材の確保がそのまま売り上げに直結します。当社の検証では、求人票に「給与前払いサービス利用可」と明記しただけで応募数に約4倍の差がつきました。「働いたらすぐに給与を受け取れる」という条件を重視する求職者の応募が多いことがわかります。
また、給与前払いサービスは、継続利用する就業者が多く、定着率の向上にも寄与しています。働いた分の給与を自由なタイミングで受け取れるという選択肢があることは、就業者に安心感をもたらし、結果として職場への満足度やロイヤリティの向上につながります。
実際、警備業界では利用率が70%に達し、平均月9回・計13万円を前払いで受け取る就業者もいます。定着率が向上すれば、人材の採用・教育コストの削減にもつながります。
給与前払いサービス「即給 byGMO」 ができること
- 他社サービスと比較した際、「即給 byGMO」の最大の強みはどこにありますか?
最大の強みは、即時に安定した振込ができる安心感と信頼性の高さだと考えています。給与という「お金」を扱う以上、セキュリティやシステムの安定性は絶対条件です。私たちGMO-PGには、年間20兆円規模※の決済インフラを支える技術と運用実績があります。さらに、三井住友銀行(SMBC)との協業体制を構築することで、万全のセキュリティ体制と高い稼働信頼性を確保しています。
加えて、ヒューマンエラーを防ぐための社内教育やオペレーション体制にも継続的な投資を行っており、事故やミスが起きない仕組みを徹底している点も、他社にはない優位性だと考えています。
※2025年3月末現在、連結数値
- 導入の柔軟性についても特徴があると聞いています。
「即給 byGMO」では、事業者様の運用状況に合わせて3つの導入スキームを用意しています。
1つ目が、弊社が資金を立て替えて、後日事業者様に請求する「立替型」。2つ目が、事業者様自身の資金で前払いを行う「デポジット型」、そして保証金を預けていただく方式の「預託型」です。
最適な導入形態を選べるのが特徴で、さまざまな業種・規模の事業者様にご利用いただいています。
- 運用面での負担についてはいかがでしょうか?
運用にあたっては勤怠データをCSVでアップロードする必要がありますが、慣れてしまえば1日5分から10分程度で作業を完了できます。さらに、勤怠管理システムとAPI連携することで、運用を自動化できるケースもあり、利便性は年々向上しています。
- 就業者にとっての使いやすさについてはいかがでしょうか?
UI/UXにも力を入れており、アプリやウェブ上での操作をシンプルかつ直感的に行えるのが特徴です。
また、特に評価をいただいているのは、給与前払いの申請後すぐに給与が口座に振込まれる「即時振込」の仕組みです。申請から振込までにタイムラグがある他社サービスもある中で、24時間365日、前払い申請ができ、申請いただければ即時でご指定の銀行口座にお振込みいたします。
なお、今後銀行振込だけではなく、デジタルマネーでの受け取りもできるようにする予定です。
-スポットワークを始めたいというお客さまからのお問い合わせも?
スポットワーク事業者様や、すでに人材派遣などの事業をされていて、これからスポットワークを行う事業者様から、就業者様への送金についてのお問い合わせをいただくことが増えてきています。
スポットワーク事業は、給与を日払いで行うサービスのため、早く効率的に送金する仕組みが求められます。弊社では「GMO-PG送金サービス」という、ECサイトでの返金や、オークション・フリマアプリの出品者への送金、チケットなどの払い戻しやキャンペーンでのキャッシュバック等に使える送金サービスがあります。このサービスを利用し、給与の支払いにおいても任意のタイミングで就業者様が希望される口座などに送金することも可能です。前払いだけではなく、ご要望に応じて適切な給与支払いの方法をご提案しています。
新しい給与支払い方法
- 2023年4月から、新しい給与の受け取り方として「給与(賃金)のデジタル払い」が解禁されました。この仕組みについてはどのようにお考えですか?
給与のデジタル払いは、銀行口座を介さず、PayPayや楽天ペイなどの電子マネー口座へ直接給与を振込む方式です。大手企業では一部導入が始まっていますが、帝国データバンクの調査では、導入に前向きな企業は3.9%※にとどまるという結果もあり、現時点ではまだ、自社の就業者ニーズを探りながら検討されている企業が多いようです。就業者ニーズの観点では、急な支出機会にすぐに支払いたい、という利用シーンが多い給与前払いサービスと、給与のデジタル払いは、非常に親和性が高いと思います。
※出典:帝国データバンク「賃金のデジタル払い、約9割が『導入予定なし』」
- 今後、給与のデジタル払いはどのように普及していくと考えていますか?
企業の導入意向はまだ低水準ですが、今後、キャッシュレスの浸透と若年層のニーズを背景に、徐々に普及すると予想されます。当社でも適切なタイミングで就業者様や事業者様にサービス展開できるようにしていきたいと考えています。
未来展望:給与Fintech が描く"次の常識"
- 今後、給与前払いサービスは企業にとってどのような存在になっていくとお考えですか?また、そこにどのようなビジネスチャンスがあると見ていますか?
給与前払いサービスは、これから数年で「あるのが当たり前」の福利厚生になっていくと考えています。今後、若年層を中心とした生産年齢人口の減少は加速し、人材の確保はますます困難になっていくでしょう。その中で、給与を柔軟に受け取れる仕組みを整えることは、人材確保や定着率の向上の観点からも、企業にとって欠かせない取り組みとなるはずです。
また、現行の給与や福利厚生に関する制度には、何十年も前の仕組みがそのまま残っているものが数多くあります。そうした「アップデートされていない領域」には、依然として大きな改善余地とビジネスチャンスが眠っていると感じています。
- 今後、「即給 byGMO」をどのように展開していきたいと考えていますか?
私たちは「即給 byGMO」を、給与前払いサービスの代名詞となるような存在に育てていきたいと考えています。目標は、5年以内に「給与前払いといえば即給」といわれるような圧倒的な認知と信頼を獲得し、給与前払いサービス市場で確固たるポジションを築くことです。
その実現に向けては、まず多くの事業者様に安心して導入していただける仕組みを整え、信頼と実績に裏打ちされた存在感を持つサービスへ成長させていくことを重視しています。
給与Fintech事業部としては、「即給 byGMO」の他にも、給与・福利厚生領域において、様々なサービスを開発、提供していきたいと考えています。
まとめ
給与の支払いタイミングや支払い方法の見直しが、採用力や定着率、就業者満足度の向上につながる、そんな時代がすでに始まっています。
人材確保が難しくなるこれからの時代において、給与前払いをはじめとする柔軟な給与制度は、企業と就業者の関係性をより健全に、そして前向きなものへと変えていくカギになっていくことは間違いないでしょう。
まずは、給与制度の当たり前を見直すところから始めてみませんか。働く人に選ばれる企業になるために、「即給 byGMO」の導入は、最も現実的で効果的な一手となるはずです。
(by あなたのとなりに、決済を編集チーム)
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