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インパクトファイナンスとは -考え方やメリット・基本的な流れをわかりやすく解説-

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インパクトファイナンスとは、社会的または環境的な成果を意図的に創出することを目的としながら、経済的なリターンも追求する金融活動です。投融資活動を通じて持続可能な開発目標(SDGs)やそのほかの社会課題の解決を支援することを目指します。
インパクトファイナンスとは何か、またなぜ今インパクトファイナンスが注目されているのか、その考え方や特長について解説します。

インパクトファイナンスとは

インパクトファイナンスとは、ESG金融と同様に環境・社会・ガバナンス要素を考慮しつつ、より積極的にポジティブなインパクトの創出を意図し、その成果を測定する投融資活動を指します。中長期的な視点に基づき、民間資金をはじめとする多様な資金源を活用しながら、適切なリスクとリターンのバランスを追求することを特徴としています。
ESG投融資は、環境、社会活動、コーポレートガバナンスに配慮した企業を選択して投資を行いますが、インパクトファイナンスはその一歩先を進み、明確にポジティブな成果を意図し、その効果を測定・報告する点で異なります。

インパクトファイナンスは、以下の要件をすべて満たす必要があります:

  1. 投融資に際し、環境、社会、経済の各側面における重大なネガティブインパクトを緩和・管理するとともに、少なくとも一つのポジティブなインパクトを創出することを意図していること。
  2. インパクトの評価とモニタリングを国際的なガイドライン(例: IRIS+やImpact Management Projectなど)に基づいて適切に行うこと。
  3. インパクトの評価結果およびモニタリング結果を透明性のある形で開示すること。
  4. 中長期的な視点に基づき、金融機関や投資家双方にとって適切なリスクとリターンを確保する努力を行うこと。

インパクトとは

インパクトとは、組織の活動や投融資が社会、環境、経済に及ぼすポジティブまたはネガティブな変化を指します。この変化は、単なる結果や成果物にとどまらず、活動がもたらした具体的な影響(アウトカム)として評価されます。特に、インパクトファイナンスの文脈では、投融資が環境や社会、経済面に与えた効果が重視され、その変化が意図的かつ測定可能であることが求められます。
インパクトファイナンスを行う際は、ポジティブなインパクトを意図的に追求する必要があります。しかし、たとえ大きなポジティブインパクトが見込まれる場合であっても、ネガティブインパクトが相殺されるわけではありません。そのため、重大なネガティブインパクトについては適切な緩和措置や管理を行うことが必須となります。

インパクトファイナンスのメリット

インパクトファイナンスは、投融資や企業の事業活動において、ポジティブインパクトの意図や関わり方が明確になります。ポジティブインパクトが何かはっきりすると、投融資先の企業、金融機関、投資家の価値が高まります。さらに競争力の維持や向上にも繋がります。また、企業の持続可能な経営基盤を強化し、ポジティブインパクトを重視した資本市場へのシフトを促します。結果として、サステナブルな未来の構築に向けた基盤形成にも貢献します。

社会的なメリット

インパクトファイナンスが拡大することで、ESG投融資がもたらす環境、社会、経済的な影響がより明確になります。これにより、インパクトを重視した新たなビジネスモデルの構築が促進され、資本市場全体で持続可能性を重視する動きが活性化します。
さらに、インパクトファイナンスは、カーボンニュートラルの推進や2030年までのSDGs目標達成において重要な役割を果たします。環境・社会・経済におけるポジティブインパクトの創出を通じて、サステナブルな社会づくりの推進力となります。

企業の資金調達におけるメリット

インパクトファイナンスを通じて資金調達を行うことで、企業が環境、社会、経済の課題にどのように取り組んでいるかを客観的に可視化できます。この透明性は、投資家や株主、顧客などのステークホルダーとの信頼関係を強化する助けとなります。
また、持続可能な経営を強化することで企業価値が向上し、ポジティブインパクトを追求する金融機関や投資家から新たな資金調達の機会を得やすくなることが期待できます。これにより、企業活動と社会的貢献の両立を実現することが可能となります。

金融機関や投資家におけるメリット

金融機関や投資家がインパクトファイナンスを活用することで、ESG投融資を発展させ、環境、社会、経済的な課題に取り組む企業の活動を支援できます。この支援を通じて、持続可能な社会の実現に貢献するとともに、社会的評価やブランド価値の向上につながるでしょう。
さらに、ポジティブインパクトの大きい企業に投融資することで、投資先の企業価値の向上やネガティブインパクトの緩和が期待できます。このような活動は、資本市場全体の安定化や持続的成長にも寄与します。
加えて、インパクトファイナンスは、金融機関や投資家の収益向上だけでなく、地域社会の持続的成長を支え、長期的な収益基盤の安定にもつながります。結果として、投資家と社会の双方にとって価値を創出する仕組みを構築します。

インパクトファイナンスの基本的な流れ

個別の投融資におけるインパクトファイナンスの基本的流れ
▲個別の投融資におけるインパクトファイナンスの基本的流れ


インパクトファイナンスの基本的な流れを個別の投融資で見ていきましょう。

① インパクトの特定

ポジティブインパクトだけでなく、重大なネガティブインパクトも特定することが重要です。両方のインパクトを明確化するために、まずコアインパクト(主要なインパクト)の特定を行います。ポジティブインパクトは、将来的に創出が期待される意図的な成果であり、ネガティブインパクトは、緩和や管理が求められる重大な影響を指します。

・ポジティブインパクトの特定
企業の主要な事業から将来的に創出される可能性の高いものを選びます。具体的には、SDGsの目標や、国連環境計画金融イニシアティブ(UNEP FI)が策定した「インパクトレーダー」などを活用することで、効率的かつ効果的に特定が可能です。「インパクトレーダー」は、企業の事業活動がSDGsの目標にどのように貢献できるかを分析し、ポジティブインパクトを特定するための指針を提供します。これにより、ポジティブインパクトを生み出す意図を明確にし、目標設定を行うことができます。

・ネガティブインパクトの特定
ネガティブインパクトは、企業の意図や事業活動以外の要因によっても発生する場合があります。そのため、事業活動を行う国や地域の特徴、調達先の地域特性、労働環境、サプライチェーンなどを包括的に確認する必要があります。「インパクトレーダー」は、企業やそのサプライチェーンが潜在的に引き起こすリスクを評価する際にも活用でき、重大なネガティブインパクトを効率的に特定する助けとなります。また、副次的に生じるインパクトについても、定性的であっても可能な限り独立した要素として考慮します。

② インパクトの事前評価

特定したコアインパクトをKPI(重要業績評価指標)や数値目標を用いて事前に評価します。このプロセスは投融資前に行うもので、インパクトの管理体制、ビジョン、戦略、経営層のコミットメントなども考慮します。

新しい市場への参入や既存事業の品質向上など、新たなポジティブインパクトを創出しているかを確認します。結果は以下の3つの分類に分けられます:

  1. ポジティブインパクト
    • 環境、社会、経済のいずれかに大きなポジティブインパクトを与える。
    • 重大なネガティブインパクトが適切に緩和・管理されている。
  2. ポジティブインパクトトランジション
    • 環境、社会、経済のいずれかに大きなポジティブインパクトを与える。
    • ネガティブインパクトは緩和されていないが、中長期的なビジョンや移行計画を策定し、実行に向けた取り組みを行っている。
  3. ポジティブインパクトに該当しない
    • ネガティブインパクトが緩和されておらず、ポジティブインパクトへ移行するためのプロセスもない。

③ インパクトのモニタリング

特定したコアインパクトは、KPIに基づき定期的にモニタリングします。目標を設定している場合は、その達成状況も確認します。

・適切なモニタリングの実施
有効なモニタリングの実施には投融資先企業やプロジェクトによる情報開示が重要です。適切なモニタリングが困難にならないよう、必要な情報の開示を促すことが求められます。モニタリング結果の客観性を確保するために、独立した内部部門または第三者機関による外部評価を行うのが望ましい。

・ネガティブインパクトの継続管理
ネガティブインパクトについては、緩和や管理の取り組みが持続していることを確認します。

④ 情報開示

金融機関や投資家がインパクトファイナンスを実施する場合、投融資時に特定したコアインパクトやKPI、さらに事前評価の内容を適切に開示することが求められます。投融資後についても、少なくとも年に1回以上、モニタリングの結果を情報開示する必要があります。これらの情報は、入手可能な範囲でかつ秘密保持契約などの規定に違反しない形で、ウェブサイトや統合報告書、各種レポートなどを通じて公開されます。

GMOペイメントゲートウェイのインパクトファイナンスの事例

GMOペイメントゲートウェイでは、経営理念「社会の進歩発展に貢献する事で、同志の心物両面の豊かさを追求する」のもと、オンライン化・キャッシュレス化・ペーパーレス化・DXなどを支援する決済を起点としたサービス提供、実質再生可能エネルギーによるEC決済処理、決済・金融技術での社会イノベーションの牽引、金融包摂FinTech企業への投融資などのSDGsへの取り組みを行っています。その一環として、同社はインド農村部で銀行口座・預金を持てないといった金融サービスを受けられない人々に対してマイクロファイナンスの提供するSATYAに対し、インパクトファイナンスを実施しました。

GMOペイメントゲートウェイは、インドにおける金融サービスへのアクセスをさらに拡大するため、現地法人を拠点とした案件の開拓を今後も積極的に進めていく方針です。

参考:金融包摂FinTech企業へのインパクトファイナンスを推進 ~五常のインドグループ会社、マイクロファイナンス大手のSATYA社に融資~

まとめ

インパクトファイナンスは、単なる利益追求を超え、環境、社会、経済にポジティブな変化をもたらしながら、持続可能な社会の構築とSDGsの目標達成を目指す重要な取り組みです。適切なリスクとリターンの追求を通じて、金融機関や投資家だけでなく、地域社会や地球全体に価値をもたらすこの仕組みは、新たな経済や社会のあり方を形成し、未来を切り開く鍵となるでしょう。
インパクトファイナンスがさらに普及し、多くの人々や企業がその価値に気づくことで、より良い社会を実現する力となることが期待されます。

※参考:環境省「インパクトファイナンスの基本的考え方」

(by あなたのとなりに、決済を編集チーム)

※本コンテンツ内容の著作権は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社に属します。

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