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インドの金融包摂をインパクトファイナンスで進める〜マイクロファイナンス機関への融資から、本格進出に挑戦~

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GMOペイメントゲートウェイは2021年9月、インド法人が運営するファンドを通して、「五常・アンド・カンパニー株式会社(以下、五常)」のインドにおけるグループ会社で、マイクロファイナンスを提供している「SATYA MicroCapital Ltd.(以下、SATYA)」へのインパクトファイナンス(融資)を実施しました。インドにおける金融アクセス及びマイクロファイナンスの現状を振り返りながら、今回の融資の仕組みと意義、そして、これからのインド戦略についてアジア事業統括部統括部長の中嶋に聞きました。

注)マイクロファイナンス:貧困層や低所得者層の経済的自立を目的として行われる小口(マイクロ)融資(ファイナンス)の総称。ノーベル平和賞受賞者のムハマド・ユヌス氏が創設した、バングラデシュのグラミン銀行が有名。
注)インパクトファイナンス:環境・社会・経済にポジティブなインパクトをもたらすことを意図した金融。もちろん適切なリスク・リターンを確保することが前提。世界的な潮流となりつつある。

インド農村部の貧困層の経済的自立のため、マイクロファイナンスが必要とされている

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―インドにおける金融インフラ及び金融アクセスの現状について聞かせてください。

金融インフラそのものは非常に整備されています。例えば、オンラインでのカード決済の手数料は1%台と非常に低いのに加え、銀行振込の手数料は無料で、24時間即座に振り込むことができます。さらに、生体認証国民ID「アドハー(Aadhaar)」と銀行口座が紐づけられており、技術的には指紋認証のみで銀行取引ができる仕組みが整っています。その一方で、国民一人当たりのGDPは、家電や自動車の急速な普及がはじまる3,000ドルのラインを大きく下回っており(2019年2,099ドル)、銀行の与信システムからすると融資のターゲットにならない人が非常に多いのです。インド経済は急成長を続けていますから、お金を借りて、それを元手に事業を始めれば、一定の収益を見込むことができるわけですが、とにもかくにも先立つものがありません。新興国に共通する傾向ではありますが、インドでは都市と農村との貧富の差が大きく、地方に行けば行くほど金融サービスにアクセスできない人が圧倒的に多くなるという現実があります。

―こうした環境のなか、マイクロファイナンスが発展を遂げたわけですね。

そうですね。マイクロファイナンスは長い歴史を持つビジネスモデルで、南アジアや東南アジアを中心に広く普及しています。インドでも多くの企業がマイクロファイナンス事業に参入しており、銀行及びノンバンクに並ぶ金融プレーヤーとしての地位を確立しています。なかには上場しているマイクロファイナンス機関もあります。こうした機関が「マイクロビジネスをスタートしたいけれども500ドル足りない」といったニーズを持つ人々に融資を実施することで、彼らの経済的、社会的な自立を促してきたのは間違いありません。なかでも、多くのマイクロファイナンス機関が女性を対象に融資を行っており、子どもの教育参加率の向上や、夫に依存せざるを得ない状況からの解放に寄与するなど、大きなソーシャル・インパクトを生み出しています。私どもがSATYAへの融資を決めた背景にも、マイクロファイナンス機関への融資を通して、金融包摂(ファイナンシャルインクルージョン)を実現したい。つまり、金融サービスにアクセスできる人々を増やし、世界の貧困問題を解決したいという思いがありました。

SATYAのようなマイクロファイナンス事業者への融資を通じて、金融サービスにアクセスできる人々を増やす

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―今回、融資を実施したSATYAの親会社「五常」とはどのような企業なのでしょうか。

五常は、インド、カンボジア、スリランカ、ミャンマーの計4カ国で、マイクロファイナンス事業を運営しています。基本的には現地のマイクロファイナンス事業者を買収し、オペレーションの改善や、資金調達・ファイナンスのサポート、スマホアプリをはじめとするテクノロジーの提供、ガバナンス支援等を通して金融包摂の推進を実現しています。
マイクロファイナンスはそれなりに利益の出るビジネスモデルなのですが、比較的規模の小さい事業者が単独で存在するケースが多く、資金調達に苦労している会社が少なくありません。五常は複数のマイクロファイナンス事業者を束ね規模のメリットを活かして、こうした課題を克服しています。大きな景気変動や天変地異などの不測の事態に見舞われた場合でも、致命的なダメージを負うことなく、事業を継続していくために必要な資本力を備えています。
同社CEOの慎 泰俊さんはビジョンとエネルギーを兼ね備えた、カリスマ的な経営者で、「低価格で良質な金融サービスを2030年までに50カ国1億人以上に届ける」ことを目標に掲げています。

―SATYAに対する融資の具体的な仕組みについて聞かせてください。また、どのようなハードルがありましたか。

われわれの融資に先だって、GMOインターネットグループでグローバル・フィンテック分野への重点投資を行っているGMOベンチャーパートナーズが五常に出資しました。弊社副社長でGMOベンチャーパートナーズのファウンディングパートナーを兼務している村松が、「五常という会社はすごい。融資もできないか」ということで、海外事業を担当する私のところに話が下りてきた次第です。五常及びSATYAとコミュニケーションを取りながら、準備を進めていきました。

ハードルとなったのは海外法人からの融資に関する規制の存在です。その規制下では融資期間や金利等の面で私たちの望む条件で融資することができなかったため、新たに現地法人(GMO-Z.COM PAYMENT GATEWAY INDIA PRIVATE LIMITED)を立ち上げ、ファンド(GMO-Z.Com Payment Gateway India Credit Fund)を設立した上で貸付を行うスキームを組みました。現地法人の設立まではスムーズにいったのですが、ファンド設立のために当局の許認可を得るのが大変でした。準備を始めてからSATYAへの融資を完了するまでに、結果的に2年を要しました。

これからインドの現地法人を拠点とし融資先を増やしていく。課題はインド企業の圧倒的な進化スピードについていくこと

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―現地法人は、今後のインド戦略の拠点になると考えてよいでしょうか。

そうですね。五常グループとの取引を継続的に拡大しながら、ピュアなインド企業との対話も進めています。インドにはSME(中堅・中小企業)をターゲットにして融資を行っているフィンテック企業、個人向けローンアプリを展開しているフィンテック企業がたくさんあって、資金ニーズも大きい。私どもとしては、現地法人を拠点として、新たな案件を積極的に開拓していきたいと考えています。さまざまなインド企業とコミュニケーションを取るなかで、実力のある企業を見極める目も鍛えられてきましたし、赤字企業への融資を成功させるノウハウもついてきたと自負しています。現在は融資というかたちで間接的な関わり方をしていますが、ゆくゆくはインドのフィンテック企業を仲間に迎え、直接サービスを提供していく可能性も十分考えられますね。

―課題があるとすれば何でしょうか。

インドの企業は私たちの想像をはるかに上回るスピードで進化しています。設立間もない会社がいきなり数百億円もの資金を調達していたり、名前の聞いたことのなかった会社がいつの間にか何百万人ものユーザーを獲得していたりと、現実とは思えないようなスピードで物事が進んでいます。課題があるとすればインド側ではなく、われわれ日本側です。つまり、彼らのスピード、ダイナミズムについていけるかどうかです。インターネットで得られる情報では、すでに手遅れなんです。

彼らにキャッチアップしていくためには、現地に根を下ろして、現地の人々のネットワークから最新の情報を収集し、時代の空気を肌で感じていなければなりません。当社はインドの現地法人に駐在員を派遣して、情報収集を加速させるとともに、ローカルスタッフを集めてチームを結成し、新たなビジネスを次々と立ち上げていってもらう計画です。インドできっちりとビジネスを創り上げれば、そこで得た知見やノウハウを東南アジアや南アジアに展開していく可能性も拓けます。その意味で、インドの金融包摂は当社の海外戦略の要であり、やりがいのある仕事だと思っています。

【話者】

GMOペイメントゲートウェイ
企業価値創造戦略 統括本部 アジア事業統括部 統括部長
中嶋 孝平(なかじま こうへい)

1980年生まれ。2003年東京大学卒業後M&Aアドバイザリー会社を経て、リクルートに入社。2013年よりインドネシアジャカルタに駐在し、旅行系EC事業の立ち上げを行う。 2017年GMO-PG入社。海外企業に対する投資を担当。その後融資事業の開始にあたり担当に手を挙げる。 シンガポールを拠点にして、東南アジアとインドにおいて投融資活動を行っている。

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(by あなたのとなりに、決済を編集チーム)

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