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デジタルインクルージョンとは|取り組む必要性や推進方法を詳しく解説

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デジタルインクルージョンは、インターネット社会の急速な発展に伴い深刻化する情報格差を解消する手段として、近年世界的に注目を集めています。誰もがデジタル社会に順応するためには、デジタル環境のインフラ整備やリテラシーの向上など、取り組むべき対策があります。本記事では、デジタルインクルージョンの必要性やその推進方法について詳しく解説します。

デジタルインクルージョンとは

article-126_thumb01.jpgデジタルインクルージョン(Digital Inclusion)とは、不利な立場・状況にある人々(収入や人種、社会的な地位、身体的なハンデの有無など)やコミュニティを含め、すべての個人とコミュニティが情報通信技術にアクセスし、これを利用できるようにするために必要な活動を指します。Inclusion(インクルージョン)とは、包括、包摂、または受け入れを意味します。これは、すべての人々を社会、組織、コミュニティなどの一部として公平に扱い、参加を促進することを指します。

デジタルインクルージョンは、日常的にデジタルデバイスやデジタルサービスを利用するようになった現代において、情報格差を防ぐための重要な要素として世界的に注目を集めています。

デジタルインクルージョンが重要視される背景

不利な立場にある人々は、デジタル時代を完全に受け入れるための支援がなければ、さらに遅れを取るリスクがあります。デジタルインクルージョンが重要視される背景には、デジタル社会への発展に伴う情報格差があります。

新型コロナウイルスの拡大により、リモートワークやeコマースなどデジタルサービスの利用が急速に拡大しました。結果として、私たちはより便利で先進的な生活を手に入れることができるようになりましたが、それらのデジタルサービス・テクノロジーを何らかの要因で活用できない人との間に情報格差が生じるリスクが高まっています。例えば、デジタルデバイスを所有できない、インターネットに接続ができない低所得者層や、新しい技術を取り入れることが難しい高年齢層などは、今後さらに重要視されるデジタル資源へのアクセスが制限されることが予想できます。

このようなデジタル格差は国内だけではなく国家間でも広がっており、高所得国と低所得国の間のデジタル格差は、AI技術が社会にもたらす影響(利益とリスクの両方)の分配に著しい格差をもたらすと考えられます。不利な国やコミュニティはさらに取り残され、経済生産性、金融、気候、教育、医療など各分野におけるAIの飛躍的進歩からデジタル面で隔離され、さらに取り残されてしまう可能性があります。

デジタル格差がこのまま広がり続けると、将来的に教育格差や労働格差につながる恐れがあり、短期的な脅威として懸念が高まっています。

情報格差によって生じる不利益

前述した情報格差による不利益はさまざまなものがあります。一例としては以下の通りです。

  • デジタルリテラシーが足りず、労働の機会を逃す(労働格差の拡大)
  • デジタルな教育コンテンツにアクセスできないことによる、教育の質の低下
  • デジタル技術を用いない職業の別業種への転職機会の損失
  • 政府や地方自治体が提供しているデジタルサービスや情報提供サイトの閲覧ができず、災害時の被害が拡大する

このように、デジタル社会の拡大における情報格差は収入格差や労働格差につながる恐れがあります。また、デジタル情報格差の脅威は必ずしも低所得層だけが直面している問題ではなく、医療現場や士業など現代では収入が安定している職業にも影響がある可能性があります。

デジタルインクルージョンが社会に与える影響

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デジタルインクルージョンの大きな目的は情報格差の拡大を防ぐことですが、結果として労働面や経済成長の側面でも良い影響を与えると予想されています。詳しく見ていきましょう。

企業の生産性が向上する

デジタルインクルージョンを実現することで、企業はデジタルテクノロジーを活用した情報処理や業務の遂行が可能となります。これにより、ICTへの投資が増え、生産性の向上に繋がるでしょう。さらに、AIなどの技術を導入することで、従来の人手による業務を自動化し、業務処理の効率と正確性が向上します。これにより、企業が提供する製品やサービスの品質向上が期待されます。

また、直接的には収益に影響しない業務をデジタル技術が対応することで、収益を上げる人手を業務に集中させることが可能となり、付加価値の創出に繋がります。また、製造業務がロボットに置き換わることが予測される中で、デジタルインクルージョンが進むことで、製造作業に従事していた人員は新たにロボットの管理や操作業務にシフトし、生産性の向上に寄与することが期待されます。

労働機会の創出と労働の質向上

デジタルインクルージョンが進むことで、新たな労働機会の創出と労働の質の向上が期待されます。少子高齢化が進む日本社会では、労働人口の減少が経済成長の制約となっていますが、デジタルインクルージョンにより労働参加が促進されることで、経済成長に貢献できるでしょう。例えば、テレワークやクラウドサービスの利用によって、場所に縛られない働き方が可能となり、多様で柔軟な労働形態が実現されています。これにより、地方に住む人々や出社が困難な人々も労働に参加しやすくなっています。

また、企業がAIやRPAなどのICTを導入することで、同じ生産量や付加価値を生み出すために必要な労働力を減少させ、労働生産性の向上が図られます。さらに、高度なICTスキルを持つ専門人材の需要も増加し、雇用機会が創出されることが期待されます。

需要創出による経済効果の向上

デジタルインクルージョンが実現されれば、すべての人がデジタルテクノロジーを日常生活で活用できるようになり、デジタル経済の需要が高まり、経済効果の向上に貢献するでしょう。例えば、デジタルインクルージョンが進むことで、高齢者や障がい者が使いやすいデジタルデバイスやサービスの開発が促進され、新たな市場が生まれます。こうした商品やサービスが広がることで、さらに多様な派生商品やサービスが生み出され、市場が階層的に成長していきます。

また、ネットショッピングやキャッシュレス決済といったデジタル消費の利便性が高まることで、個人消費が促進され、経済成長に寄与します。特に、コロナ禍により非接触・非対面での活動が増えたことが、デジタル消費の拡大を加速させました。このように、デジタルインクルージョンが進むことで、デジタル経済の利用者層が拡大し、新たな需要が創出されることが期待されます。

グローバル需要への対応

新型コロナウイルスの終息により訪日観光ビザの要件緩和や円安傾向が続く中、現在の日本では訪日外国人が急増しています。この状況に対応し、訪日外国人の消費を拡大するためには、多言語翻訳機能や公衆無線LANの整備が重要です。これらの取り組みはデジタルインクルージョンの一環といえます。

また、日本の製品やサービスを海外市場に展開することも重要です。例えば、ICTを活用した多言語対応のサービスやオンラインプラットフォームを整備することで、小規模な製造会社や開発企業でも海外の需要に対応しやすくなります。これにより、日本の企業が海外市場で競争力を持ち、経済成長に寄与することが期待されます。

デジタルインクルージョンを推進する3つのステップ

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デジタルインクルージョンを推進するためには、あらゆる環境下にいる人々すべてがデジタル環境に触れられるよう、障壁を取り除く取り組みが必要です。

ここでは、デジタルインクルージョンの実現に向けて必要とされる取り組みについて詳しく解説します。

デジタル・デバイドを解消する

デジタル・デバイドとは情報格差を指し、デジタル技術にアクセスできる人とできない人との間に生じる差を意味します。この格差を解消するためには、すべての人が必要な時にデジタル環境にアクセスできるようにすることが重要です。

まずは、デジタルインフラの整備が必要です。具体的には、高速で大容量のインターネット接続を全国的に提供し、地理的な制約を最小限に抑えることが求められます。また、誰もが手頃な価格でこれらのサービスを利用できるようにすることも重要です。

さらに、情報バリアフリーの環境整備も不可欠です。アプリケーションのユニバーサルデザインを促進し、例えば電話リレーサービスや聴覚障がい者向けの支援システムなど、障がい者がデジタル技術を活用できるような支援を提供することが必要です。

加えて、経済的な理由でデジタル技術を利用するのが難しい人々への支援も重要です。例えば、遠隔教育が実施される際に通信費の補助を行うなど、経済的支援を検討し実施することが求められます。

デジタルリテラシーを向上させる

デジタルリテラシーを向上させることは、高齢者を中心に「操作方法がわからない」「身近な人に聞きにくい」と感じてデジタル利用を避けている人々を支援する手段となります。これまでも地方自治体や地域の取り組みで「パソコン教室」や「スマートフォンの利用講座」などが行われてきましたが、社会全体にデジタル技術を浸透させるためには、地域密着型のサポート体制がさらに必要とされています。例えば、地元のデジタル支援員が身近な場所でデバイスの利用方法を教える仕組みが求められます。

また、身体的なハンデある人々がデジタル技術を利用できるようにするための支援体制の整備も重要です。

デジタルリテラシーの向上には、単にデバイスの操作スキルを習得するだけでなく、デジタル環境におけるリスクや危険性を理解し、それらを回避する知識を持つことも含まれます。そのため、若年層から高齢者まで、幅広い世代を対象とした教育や研修、情報セキュリティや偽情報対策などの啓発活動を続ける必要があります。デジタル技術を活用できることは、単に技術的な側面だけでなく、すべての人が社会に参加しやすくなるソーシャル・インクルージョンの一環です。少子高齢化が進む日本において、国際競争力を維持し、社会・経済機能を継続して確保するためにも、デジタルリテラシーの向上は重要な要素となります。

UI/UXを改善する

誰もがデジタルテクノロジーをスムーズに利用できるようにするためには、使いやすいUIやUXを整備することが重要です。特に、日常的に利用するメッセージアプリや電話アプリ、増加しているeコマースの領域では、利用者が直感的に操作できる利便性が求められています。UIやUXの改善は民間企業だけでなく、公的機関が提供するデジタルサービスにも必要です。

例えば、政府や地方自治体が提供するポータルサイトやウェブサイトのUIを点検し、必要に応じて改善することが挙げられます。政府ウェブサイトのデザインやコンテンツの統一化・標準化を図ることで、利用者の利便性が向上するでしょう。

また、複数の手続きが一つで完結するワンストップサービスの推進も重要です。これを実現するためには、ポータルサイトの設置だけでなく、複数の部署間でのデータ連携を強化し、手続きがデジタルで完結する仕組みを整えることが求められます。これにより、住民の利便性が向上し、行政の効率化も図られます。

さらに、UIやUXが改善されることで、これまでデジタル機器の操作が難しかった層のデジタルリテラシーの向上にも寄与するでしょう。

デジタルインクルージョンについてよくある質問

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デジタルインクルージョンはなぜ重要?

デジタルインクルージョンを推進することで、デジタル経済が急速に発展する現代において問題視されている情報格差を解消できる可能性があります。情報格差が広がると、将来的な労働格差や収入格差が深刻化すると予想されており、これを食い止める手段としてデジタルインクルージョンが注目されています。

デジタルインクルージョンの効果は?

デジタルインクルージョンを促進することで、新たな労働機会の創出や企業の生産性向上などが期待できます。さらに、これまでデジタル環境に触れていなかった層がデジタル経済に参画することにより、新たなニーズの創出につながり、結果として経済効果の向上も見込めるでしょう。

デジタルインクルージョンの進め方は?

デジタルインクルージョンを促進するためには、情報格差を解消するための環境整備が必要です。具体的には、インターネット回線などのインフラの整備や、公衆無線LANの設置などが挙げられます。さらに、デジタルリテラシーを向上させるための取り組みや、UI・UXの改善などもデジタルインクルージョンの促進には求められます。

まとめ

近年急速に成長したデジタル経済は、多くの人々にとって便利で快適な生活を提供しています。一方で、デジタル経済に接することができない層との間で情報格差が深刻化しており、世界的に課題となっています。

デジタルインクルージョンは、この深刻化している情報格差を解消する手段です。速やかに推進するためには、デジタル経済に参画できていない人々が直面している障壁を理解し、それを取り除くための取り組みを実施することが必要です。

※参考:WORLD ECONOMIC FORUM「第19回グローバルリスク報告書2024年度版」
※参考:総務省「「誰一人取り残さない」デジタル化の実現に向けて」

※本コンテンツ内容の著作権は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社に属します。

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