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インド投融資事業の新章へ!ムンバイオフィス発足メンバーが語る、インドの「今」と次なる展望

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14億人超の巨大市場を持つインド。成長の一途をたどる中、202310-12月期にはGDPの前年同期比8.4%とさらに成長を加速させていることを示した。GMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)は、2019年にインド現地法人GMO-Z.com PAYMENT GATEWAY INDIA PRIVATE LIMITEDを設立。そして20239月、駐在員を派遣しインドの現地拠点が始動した。本稿では、成長著しいインドにおいて、GMO-PGがどのような事業を展開しているのかをひも解く。ムンバイオフィス発足を目前にしたタイミングで、発足メンバーである鈴木とピユシュに、GMO-PGのインド進出の背景からインドの現状やFinTechビジネス、そして今後の展望について聞いた。

※2024年2月29日インド政府発表。2023年10月から12月までの国内総生産の伸び率
(取材日:2023年9月29日)

GMOペイメントゲートウェイ
企業価値創造戦略統括本部 アジア事業統括部 アジアMSB推進部 インド課課長

鈴木 大岳

2013年NTTコミュニケーションズに入社し、2015年にインド駐在を経験。その後博報堂にて海外M&Aを担当。2022年GMO-PG入社。2023年6月よりインド駐在。

GMO-Z.com PAYMENT GATEWAY INDIA PRIVATE LIMITED
Assistant Vice President/Debt Finance

ピユシュ・ボスラ

2011年にThe Bank of Tokyo Mitsubishi UFJ limited, New Delhiに入行し、営業や経営企画などに従事。
日本でMBAを取得後、2023年1月にGMO-PGのインド現地法人GMO-Z.com PAYMENT GATEWAY INDIA PRIVATE LIMITEDに入社。

なぜGMO-PGがインド現地法人を設立したのか


▲アジアMSB推進部 インド課課長:鈴木

──鈴木さんはインド駐在を開始して3か月程経ったそうですが、現在はどのような活動をされているのですか。

鈴木 大岳(以下、鈴木):現在はインドの西側の都市ムンバイに駐在しており、拠点立ち上げに心血を注いでいる最中です。オフィスの契約進行中で、これまではオフィスがなく、GMOペイメントゲートウェイ本社ビルで勤務しておりました。インド拠点本格始動に向けて頑張っています。

私はアジア事業統括部のアジアMSB推進部に所属しており、主にインドと東南アジア地域における投融資を担当しています。投資は株式出資の事で、一方、融資はデッドファイナンスとも呼ばれ、金利を頂戴するモデルです。

GMO-PG自体がもともとFinTech企業であり、日本では先進的な企業であったため、創業以来多くのナレッジが蓄積されています。我々はそのナレッジを基に、インドのFinTech企業に投資と融資を行っています。

──GMO-PGはこれまで東南アジアを含む他の地域でも様々なビジネスを展開してきたかと思いますが、なぜインドにおいては現地法人を設立し、ビジネスを展開することになったのでしょうか?

鈴木:2つの理由があります。

まず、市場が非常に大きいことが挙げられ、GMO-PGとしてはこの市場を重要視しています。現地で法人を設立、人材を採用し、現地の商習慣に基づくオペレーションによって成長を加速させていきたいと考えています。

もう一つの理由は、法規制の観点からです。インドで金融ビジネスを展開する際に、現地当局のルールに従った運営が必要です。例えばシンガポールやインドネシアは越境融資が可能ですが、インドは越境融資のハードルが高いといった課題があります。現地ルールに則り、迅速にオペレーションを展開していく為にも現地法人の設立が必要です。

ピユシュ・ボスラ(以下、ピユシュ):日本は比較的経済変化が穏やかですが、インドはまだまだ成熟した市場ではなく、規制が変動したり、政府の戦略によって大きな動きが起きたりすることがあります。

頻繁とまでは言えませんが、物事が最終的に決定するまで2~3回は制度が変わることがあります。進めながら変化していくので、コンプライアンスの面やリスク関連の観点から見て、インドのマーケットは注意が必要です。

鈴木:さらにインドでのビジネスを推し進めるため、この度現地拠点としてムンバイにオフィスを開設しました。アジア事業統括部長の中嶋が以前話している(インドの金融包摂をインパクトファイナンスで進める)ように、現地の人々のネットワークから最新情報を収集するなど現地でのチーム作りを通し、インドでのビジネス創りを目指しています。

ショッピングモールと露店が共存するムンバイ


▲GMO-Z.com PAYMENT GATEWAY INDIA PRIVATE LIMITED Assistant Vice President/Debt Finance:ピユシュ

──実際にインドを訪れ、ご自身で感じたことや日本との違いについて教えてください。

鈴木:8年前に初めてインドを訪れ、今回はそれ以来の再訪となります。インドの成長を肌で感じることができ、本当に変化が著しい印象を受けました。

訪れたムンバイでは8年前と比較して高速道路が整備され、大渋滞は改善されてきています。食文化においては、インド産のクラフトビールやクラフトコーヒーなどこだわりを持った飲食店が増え、多様化が進んでいるようでした。当時はまだあまり見られなかった日本食レストランも、今では軒数が増えており、街の雰囲気が変わってきているのを感じました。

ピユシュ:ムンバイやデリーはここ15年ほど、どこも建設ラッシュでまだまだ変化が続くでしょう。


▲ムンバイの街並み。高層ビルやマンションがそびえ立つ(2024年1月撮影)


▲ムンバイにオープンしたアップル直営店(提供:Apple

鈴木:またインドの新しいビックニュースとして、国内第1号店となる非常に大きなアップル直営店がムンバイにオープンしました。インドで使われているスマートフォンはほとんどがAndroidで、それも格安スマホが主流でした。しかし、中間層の人口が増加しており、ショッピングモールも増えているため、アップルにとってもビジネスチャンスが広がっています。

ピユシュ:去年から約20億ドル分のiPhoneが流通していると大きなニュースになりました。最新のiPhone15も実はすでにインドで生産されており、インド国内で話題となっています。

鈴木:こうした変化が著しい面がある一方、インドには昔ながらの、地域に根差した個人経営の小さな露店が街中にたくさんあります。これはキラナストアと呼ばれ、お茶などの食品や日用品から、家電、車の部品・タイヤまで様々なものが売られています。

今後こういった個人もしくは中小零細企業がインドの成長を牽引していくと言われています。GMO-PGの融資事業は、こうした人々にも事業資金を提供できるようにしていきます。


▲キラナストアの様子

インドに根差したFinTechビジネスモデル

──現在、どのような企業に融資を行っているのですか。

ピユシュ:基本的にはスタートアップ、その中でもFinTech企業様への融資を行っております。例えばインドのアンダーバンクト(Underbanked:銀行の融資を受けることが難しい層)の人々の金融ニーズに応えているFinTech企業などです。日々の生活から事業用資金まで資金使途は様々です。

鈴木:インドではまだ農村や都市部でも、クレジットヒストリーが不十分で銀行が資金を貸し出せない層が多く存在します。しかし、FinTech企業がそれに対応し、テクノロジーの力により現在は与信ができるようになっています。我々はそうした企業に対して融資を行い、金融包摂に貢献していると考えています。

たとえば融資先の一つである「Lendingkart」という企業は、インド全土の中小零細企業に融資サービスを提供しています。これらは、日本の中小企業とは異なり、先ほど言及したような、例えばキラナストアなどが対象となります。

銀行から融資を受けるためには、銀行に足を運び、財務諸表や所得税申告書などさまざまな資料を用意し、面談を行うプロセスが必要です。しかし、そもそもこれらの資料を提供することが難しく銀行から借入できない企業が多く存在します。「Lendingkart」は、このような層に対して、テクノロジーと分析ツールを駆使し、数千ものデータポイントを分析して小規模企業の信用力を迅速かつ正確に評価しています。その高い与信能力により、異なる文化を持つインドの西から東まで全域にわたってサービスを提供しています。

借り手は、オンラインでPANカード(マイナンバーカードのようなもの)や本人確認資料などをアップロードすると与信が開始され、非常に簡単に利用できます。与信プロセスはデジタル完結で、そのスピーディな与信により、数時間で融資を受けることも可能となります。

ピユシュ:また、今融資準備を進めている「Revfin」という、Eリキシャに特化したファイナンスサービスを提供する企業があります。将来的な成長が期待されるEリキシャ市場に焦点を当てているのが特長です。

▲Eリキシャ

リキシャは、インドでは街中のちょっとした移動によく利用される身近な交通手段です。

インドでは大気汚染対策として政府がEV(電気自動車)の普及を推進しており、購入にあたり様々な補助給付などが実施されています。特にニューデリーではEリキシャが増えている様子が見受けられます。

通常の自動車市場では中古市場が成熟しており、購入した車の担保価値を算定することが可能な一方、Eリキシャはまだ新興マーケットであり、新車の販売フェーズのため、ファイナンスしたEリキシャの再販や、その担保価値の見極めが難しく、そのため融資を受けることが難しいという課題があります。

Revfinはこのニーズに特化し、Eリキシャを手に入れることを支援する融資を提供しています。特に低所得者がEリキシャを購入し、ドライバーとして働くことで所得向上にも寄与しています。

融資が行われた後、Revfinは購入したEリキシャにloTデバイスを取り付け、モニタリングを実施します。返済状況や稼働実績を常にモニタリングし、問題が発生した場合は迅速かつ適切に対応します。これにより、資金の使途が明確になり、返済が円滑に進む環境を整備しています。

※「Revfin」は2024年3月時点融資開始済み

GMO-PGへの還流効果と社会貢献性を見極める


▲社内勉強会の様子。インドのFinTech先端技術やビジネスモデルを、東京オフィスでGMO-PGパートナー(社員)に共有。

──2つの融資先をご紹介いただきましたが、このような企業を選定する基準や、優先的に支援していくかの決定プロセスにおいて重要視されるポイントはありますか?

鈴木: GMO-PGへの還流効果と社会貢献性の高さが重要なポイントです。当社のコア事業は決済代行事業ですので、融資先とのシナジーという視点は常に持っています。

これまで融資してきたお客様の中には、独自のスキームでクレジットカードを発行したり、KYC(顧客審査)が日本よりも迅速に行えたりするなど、我々としても学ぶべき点は多くあります。我々の事業に生かせる事は無いか、当社の投融資先同士で何か連携できるかといった点は重視しています。もう1つは金融包摂で、まだ金融アクセスを持たない層にサービスを届けて社会貢献することが大切だと考えています。

──実際にその投資や融資対象の企業はどのように探されていますか?

鈴木:1つは自らがインターネット等で情報収集し、気になった企業に直接アプローチする方法です。

もう1つは金融機関やベンチャーキャピタルからの紹介案件です。弊社は数年前から事業を展開しているため繋がりができており、積極的にご紹介頂ける機会が増えています。やはり有名レンダー(貸し手)は多くの企業との繋がりがあり情報を豊富に持っている事が多いです。案件の紹介だけでなく、時流を捉えるためにも業界内における横の繋がりも重要ですね。

また、インドは資金需要が非常に高いため、FinTech企業から直接お問い合わせいただくことも多いです。これら3つがメインのソーシング経路です。

ピユシュ:最近GMO-PGはインドのスタートアップ界隈でもプレゼンスが上がってきており、企業からの検討依頼が増えています。

インドにおけるGMO-PGのプレゼンスを拡大

──今後の展望について教えていただけますでしょうか?

鈴木:現在、当社では継続して投資と融資事業に焦点を当てております。融資事業自体も非常に大きな需要があり、インドが成長傾向にあることから、まだ支援されていない、または融資を受けていないお客様が多く存在しています。ここは引き続き注力していきます。

もう少し中長期的な視点で見ると、投融資先の対象領域の拡大、自社での事業展開の2つの方針があります。

現在の融資先はFinTechの中でも一部の領域に限られておりますが、GMO-PGの他事業や投資先とのシナジーも鑑みながら投融資先の領域を拡大していきたいと考えています。例えば、決済、クレジットカード、端末、KYC、セキュリティ、広告など、さまざまな可能性があると見ています。

また、現在はファンドからの融資が主なスキームですが、もっと迅速に金融サービスを提供するためにも自前の事業展開も進めていきます。

インド現地の方にも参画いただいて、より現地に根差したチーム作りを進めていきたいです。チームを拡大するとともに、新たな案件をさらに増やしていきます。

また、GMO-PGはインドFinTech領域への投融資事業として、まだ日本企業でありながら先進的な取り組みを行っている方ではありますが、特にインドにおいては「GMOペイメントゲートウェイにまずは相談」という認知を日本企業の方からも得られるよう頑張っていきたいなと思います。

by あなたのとなりに、決済を編集チーム)

※本コンテンツ内容の著作権は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社に属します。

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