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持続可能な社会の実現に向けた「脱炭素テック企業」の3つのトレンド

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2020年1月、国際決済銀行とフランス中央銀行が「グリーンスワン ー気候変動の時代における中央銀行の役割と金融の安定―」を発表し大きな話題となりました。この報告書では、「二酸化炭素などの温室効果によって地球温暖化が進み、世界経済や金融システムに大きな影響を与える可能性がある」、「石炭や石油、天然ガスなどの市場環境や社会環境が激変すると、投資家らによる投げ売りが発生し、結果的に金融危機を招くおそれがある」などが言及されています。
また、2021年には国連気候変動に関する政府間パネルのIPCCが、「人間活動が大気・海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と断言し、2018年の特別報告書での世界平均気温上昇1.5度に達する時期が約10年早まると予測しました。
それまでにも気候変動への対策については、1997年の京都議定書、2015年のパリ協定のCOP(気候変動枠組条約締約国会議)、そして、2015年9月の国連サミットではSDGsなどで議論が進んできましたが、「グリーンスワン」や「IPCC」の報告が具体的に「脱炭素」への取り組みを後押しし、関心が高まったといえます。

今回は脱炭素への取り組みのなかでも「脱酸素テック企業」の3つのトレンドについて紹介、解説します。

脱炭素テック企業の3つのトレンド

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脱炭素の技術発展は日進月歩で進んでおり、次々と新しい技術が登場しています。そのなかでも今回は、①CO2排出量の可視化 ②カーボンオフセットのマッチング ③CO2削減の直接解決 という3つのトレンドについて具体的な企業の事例を取り上げます。

1.CO2排出量のまずは見える化

まず、1つ目に「CO2排出量の可視化」についてです。
ESGを含めた非財務情報の開示が求められる中で、デジタル技術によってレポートの取りまとめやデータの取得を自動化したいというニーズに応える形で登場した技術です。主導しているのは、米国の「パーセフォニ(Persefoni)」や「サイナイ・テクノロジーズ(SINAI Technologies)」、ドイツの「プランA(Plan A)」などの脱炭素テック企業。基本的な仕組みとしては、総勘定元帳や固定資産台帳等のデータをAPIで取り込み、一定の係数をかけてCO2排出量を算出した上で、スコープ1(直接排出量)・スコープ2(間接排出量)・スコープ3(その他の間接排出量)に振り分けるサービスを提供しています。
まだ完全な自動化はできていないようですが、プランAが中小企業や自治体をターゲットに据えて、汎用的なパッケージをつくっているのに対して、サイナイ・テクノロジーズは大企業に特化して、一社一社カスタマイズしている印象を持っています。決して華々しいビジネスではないのかもしれませんが、カーボンオフセット量の正確な把握や、非財務情報のスピーディな開示のために欠かせない取り組みであることは間違いありません。

2.カーボンオフセットのマッチングによりカーボンニュートラルを目指す

「カーボンオフセット」とはCO2を含めた温室効果ガスの排出量削減に当たって、一企業の努力ではどうしても削減できない部分を、温室効果ガスの削減活動に対する投資や、排出権の取引などにより相殺する仕組みのことです。日本でも経済産業省や環境省、農林水産省が運営する「J-クレジット制度」があります。これは、CO2を含めた温室効果ガスの排出削減量、吸収量を「クレジット」として可視化し、売買する仕組みですが、CO2の排出量や吸収量の認証に時間がかかるという欠点が指摘されていました。デジタル化によって効率化を進める余地が大いにあると言えるでしょう。

カーボンオフセットのマッチングプラットフォーム

海外ではさまざまな脱炭素テック企業が、カーボンオフセットのマッチングプラットフォームを構築しつつあります。例えば、カーボンオフセットAPIを開発する米国「パッチ(Patch)」は、自社のCO2排出量を相殺するのに適したオフセットプロジェクトを発見するのをサポートするサービスを提供。世界各地の森林再生・保存プロジェクトに加えて、CO2の直接回収などの先端技術など、さまざまなオフセットプロジェクトをリストアップしています。ユーザーはリストの中から排出削減量とプロジェクトを選べば簡単に購入できる仕組みです。ただ、削減量と吸収量の正確性や、カーボンクレジットの有効性、プロバイダーやプロジェクトの信頼性をいかに担保するかという点に関してはまだ課題があります。

この点をクリアにしようとしているのが米国の「パチャマ(Pachama)」です。同社はマッチングプラットフォームの構築に加えて、衛星画像やドローン及び3次元レーザースキャナーによる三次元データを機械学習によって解析し、カーボンクレジットの対象となる森林が回収したCO2量を算出することで、カーボンクレジットの有効性を立証。かつ、自社でカーボンクレジットを確保することで、プロジェクトの信頼性を担保することに成功しつつあります。

カーボンオフセットのクレジットを販売

近年、EV専業のテスラがCO2の排出枠(クレジット)の取引によって400億円以上の利益を上げ、黒字転換に成功したことが話題になりましたが、今後は再生可能エネルギーをつくって、クレジットを売る会社も出てくると思います。例えば水力発電を行っている電力会社や自治体にはそのチャンスが十二分にあるといっていいでしょう。

CO2排出量に応じてクレジットカードの利用を制限

スウェーデンの「ドコノミー(Doconomy)」は、CO2排出量に連動したクレジットカードを開発。購入した商品やサービスをつくるために排出されたCO2量を自動計算し、アプリで確認できるほか、CO2削減プロジェクトに投資することでオフセットすることできます。また、一部のクレジットカードには、CO2の排出量が一定の水準を超えると、カードの利用が制限される機能が付けられています。北欧の人々は環境に対する意識が高いので、まずは"見える化"を契機として、自分でできるCO2排出量削減に取り組んでいきたいという思いがあるのかもしれません。

3.CO2削減の直接解決で脱炭素

CO2の直接解決という通り、大気中からCO2を直接回収する「DAC(ダイレクト・エア・キャプチャー)」という極めて大胆な取り組みがあります。

扇風機でCO2を吸着

スイスの「クライムワークス(Climeworks)」は、巨大な扇風機のような機械を使って大気中から空気を取り込み、特殊なフィルターによってCO2を吸着。アイスランドでは回収したCO2を地下に埋め、鉱物化するプラントを稼働させています。DACのコストや、吸収したCO2の貯留場所などについてはさまざまな議論がありますが、地球温暖化に対する根本的な解決策の一つであることは間違いないでしょう。

発生したCO2を回収してコンクリートに

また、カナダの「カーボンキュア(Carbon Cure)」は、セメントの製造過程で大量に発生するCO2を直接回収した上で、コンクリートに混ぜ込んで、強度の高いコンクリートをつくる技術を開発しています。

脱炭素テック企業の進化はこれから

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脱炭素テック企業の今後の方向性としては、まずは再生可能エネルギーの拡大を急ピッチで進め、全世界のCO2排出量の約40%を占めるエネルギー部門の脱炭素化を実現しなくてはなりません。欧州では「ESGの分野で覇権を握ってやろう」というくらいの勢いでグリーン産業への投資が進められ、イノベーションが生まれやすい環境が生まれつつあります。実際、一昔前まで割に合わないといわれてきた洋上風力発電の大型プロジェクトが次々と動き出しています。太陽光発電の高効率化や商用大型電気自動車の開発、液体燃料の開発、水素ステーションの運営等とともに注視していく必要があると思われます。

加えて、海のエコロジーも重要になってくると考えられます。人間が排出するCO2の23割は海洋で吸収されるといわれています。海洋に溶け込んだCO2は、植物プランクトンが光合成によって取り込み、吸収するのですが、彼らの住処であるサンゴ礁などが地球温暖化によって失われつつあります。したがって温暖化がますます加速する可能性もあるのです。CO2排出量の可視化は着々と進められていますが、海洋におけるCO2吸収量の可視化も進んでいくことが期待されます。

金融と環境のつながりは今後より密接な関係に

金融と環境はますます密接な関係になっていくのは間違いありません。特に注目されるのは欧州の動きです。EUはパリ協定(2050年カーボンニュートラルの実現)とSDGsを達成するための独自基準「EUタクソノミー」を打ち出し、①気候変動の緩和、②気候変動への適応、③水と海洋資源の持続可能な利用・保護、④循環経済への移行、⑤環境汚染の防止と抑制、⑥生物多様性と生態系の保護・回復という6つの目標を設定。この規則に基づき、大企業や機関投資家に対して非財務情報の情報開示を義務付ける方針を打ち出しています。

EUほどではないかもしれませんが、こうした傾向が全世界に広まっていくはずです。銀行はもちろん、彼らに出資している機関投資家もESG投資に注目しており、投資先や融資先に対してCO2排出量を把握するよう求めています。今後はESGに力を入れている企業への融資に当たって金利を優遇する金融機関、あるいは、「ESGに力を入れている」という理由で赤字の中小企業にも融資を実施する金融機関も増えてくるはずです。こうした動きが本格化する中で、真の「グリーン産業」に投資しやすい環境が整っていくのではないでしょうか。

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(by あなたのとなりに、決済を編集チーム)

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