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【後編】資金調達の世界的逆風に負けない融資のコツ-国・地域ごとの融資の特徴を理解して企業の成長を後押しする-

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グローバルMSB(マネーサービスビジネス:金融関連事業)におけるGMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)の強みを、米国および成長著しいインド・東南アジアで先頭に立ってビジネスを進めるキーマン2人が語り合う対談企画。前編では、融資に値する将来性の高い企業をどのように見つけ出すのかについて意見を交わした。後編となる今回は、具体的な融資先の話題や国・地域ごとの企業文化やマインドの違いから、今後の事業展開へと話は展開した。

【前編】資金調達の世界的逆風に負けない融資のコツ-グローバルな活動が投融資先見極めの精度を高める-

GMOペイメントゲートウェイ
企業価値創造戦略統括本部 グローバルMSB推進・企画部長

渡辺 学

複数の金融機関や格付会社にて証券化の商品開発や格付に約20年従事。2019年よりGMO-PGにて、米国企業への融資事業(MSB)を行う。

GMOペイメントゲートウェイ
企業価値創造戦略統括本部 アジア事業統括部長

中嶋 孝平

インターネット系企業にて2013年よりインドネシアジャカルタに駐在し、旅行系EC事業の立ち上げを行う。
2017年GMO-PG入社。海外企業に対する投資を担当。その後融資事業の開始にあたり東南アジアを中心に投融資活動を行い現在は東南アジアに加えインドへの事業展開に力を入れている。

個人やSME向けのデジタルレンディング企業がメインターゲット

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▲インド・東南アジア事業責任者:中嶋

渡辺 学(以下、渡辺):米国だけでなく、インド・東南アジアなどを含め、グローバルに融資ビジネスをしているのが、GMO-PGの特徴です。やはり地域によって、融資の内容に少しずつ違いがありますね。

中嶋 孝平(以下、中嶋):インド・東南アジアでGMO-PGが融資している企業では、モバイルアプリを通じて後払いや分割払いのサービスを提供している企業があります。初めは決済サービスだけでしたが、次第にプロダクトが拡大し現在はキャッシュローンの提供や実店舗での決済利用もできるようになっていて、クレジットカードの代替物となっています。中小企業向けのデジタルレンディング企業では運転資金を提供している会社が多いですね。特に中小企業はクライアントに納入した商品・サービスに対する代金支払いを数か月待つ必要があるので、その期間の運転資金を埋めるニーズがあります。
インド・東南アジアの市場では、規制とその解釈の変化、不明瞭さがビジネスを難しくしています。これらが要因で、相手企業の事業計画が達成されないことも少なくありません。また、融資のスキームも複雑で、単純な貸付けではなく子会社や融資専用のエンティティ(法人)を通じて融資を行うことが多いです。契約書やリスク管理の手続きも複雑になります。

国・地域による独特な規制や商慣習を乗り越える

渡辺:なるほど。この仕事のやりがいや面白さにつながっていることはありますか。

中嶋:この仕事で面白いと感じるのは、成長している新興企業と協力し、成長を支援できることです。インド・東南アジアに存在する複雑な規制や欧米諸国とは違った商習慣などを避けて通ることはできません。だからこそ面白いし、やりがいも感じるのでしょう。
例えば、欧米の投資家にはインドネシアの法人には出資しないルールを持つ法人がかなりいます。そのためスタートアップ企業としては、シンガポール親会社を設立したり、融資を受けるための専用法人を設立したりと、複雑な構成をとることになります。
こうした複雑なグループ構造でも、リスクが高まらないように融資スキームと契約内容を精査する必要があります。財務分析も複雑になってしまいますが、これらを克服して融資を実行し、そのうえで融資先の成長を見届けることができると嬉しさも格別です。
個人的には、複雑な問題を解明し、解決策を見つけることが面白いと感じています。それ自体が楽しみの一つであり、また、前回お話しした「ジャスティス」ではないですが「アンバンクト(Unbanked)」や「アンダーバンクト(Underbanked)」といった領域へ向かおうとする人々・スタートアップが、我々の顧客となっています。これらの人々が非常に社会的価値の高い事業を行っており、我々は融資を通じて彼らを支援しているという点で、やりがいを感じています。

※銀行口座 を持たない人たち、非銀行利用者層。あるいは十分な金融サービスを享受できていない人たち

米国では利害とタイミングが一致すれば融資へ

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▲米国事業責任者:渡辺

渡辺:米国では融資先を見つける手法として、20224月から新たな取り組みをスタートしました。最大の特徴は、コールドコール(初対面の相手に電話やメールでアプローチすること)が中心になっていることです。当初は、知らない相手に電話やメールで自分たちのビジネスや融資の必要性を伝えることが非常に難しかったのですが、続けているうちにネットワークが構築され効率が上がってきました。
米国では、初めて話をする相手でも、利害とタイミングさえ合えば話を聞く文化やマインドがあります。コールドコールで新たな相手に接触する際も、相手との利害とタイミングを最初に確認して、合致すれば詳細な話し合いに進むことが多いのです。この点は日本とやや違っています。

中嶋:確かに、日本やインド・東南アジアとは違った文化・マインドかもしれません。

渡辺:相手と利害とタイミングが合えば関係を続けることができます。たとえ、そのときの融資が成立しなくても、将来的に成立する可能性があると考えれば継続的にフォローアップします。いわばリターンマッチのチャンスを維持するということです。こうした米国企業のビジネスライクかつ効率的なアプローチを好む考え方が、当社にとって大きなメリットとなっています。

人脈が重要な東南アジアで10年以上の投融資実績

中嶋:東南アジアでは人脈が非常に重要になります。当社が東南アジアで融資事業を開始したのは5年前ですが、GMOインターネットグループとしてスタートアップ投資を開始したのは約10年前から。経験と実績を積み上げてきたことで、多くのルートを通じた紹介を受け、主要なFinTech企業のほとんどと面談できます。親日的な人が多いため、日本企業がアプローチしやすい環境が整っています。
インドには非常に強い融資ニーズがあり、多くの借り手がいます。さらに、借り手の資金調達を支援するエージェントも多数存在します。エージェントは資金提供者を見つけるために活動し、多くの紹介を実行しています。ベンチャーキャピタルとの連携も一般的だし、過去に融資を受けたことのある企業の経営陣が他の融資先候補を紹介してくれることもあります。

渡辺:当社が長らくFinTechおよび決済事業をグローバルで実施してきたことから生まれた、貴重なつながりですね。米国ではエージェントとの連携はあまり一般的ではなく、関連業界の専門家や弁護士事務所、あるいは我々と同様の立場の融資の貸し手などから紹介されるケースが多いです。

急速成長を志向する米国、分散して借りるアジア

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渡辺:融資実行後も、国・地域による差異が見受けられます。米国企業には急速な成長志向があり、融資実行後すぐに追加融資を検討することが一般的です。つまり、米国市場へのコミットメントの度合いも借り手が貸し手を評価するポイントとなります。

中嶋:一方、インド・東南アジアでは複数の貸し手から分散して借りることが一般的です。そのため比較的少額から融資を始めて、相手企業の業績推移や開示姿勢を見ながら増額をしてくことができるのがメリットです。
ただし、我々が得ることができる相手企業のデータが限られることがあり、継続したコミュニケーションが欠かせません。できる限り訪問するようにして情報を収集しています。粘り強いコミュニケーションと関係構築が重要になっています。

米国はSPVへのノンリコースローンに注目

渡辺:今後の展開について、お互いに紹介しておきましょう。まずは当社が米国で提供しているローンについて整理します。多くの融資先では、1つの企業グループ内に事業会社(Operation Company=オプコ)が存在し(複数存在することもある)、資産を生み出し、所有しています。それと別に、資金を調達するためだけの「箱」のようなSPVSpecial Purpose Vehicle)と呼ばれる法人が企業グループ内に存在する場合も多くあります。SPVには従業員がおらず、資産を超えた債務も抱えません。このSPVに資金を供給することで事業会社に資金が還流され、一方で資金を供給した個人または法人が利息などのリターンを得ることになります。
当社は長年に渡ってオプコに対して資金を提供してきましたが、今後はSPVにも焦点を当ててローンビジネスを展開していくことを検討しています。このアプローチはアジア地域の一部で既に採用していますが、SPVは調達のために意図的に作られた法人であることから、その債務を優先的に資金が還元される「シニア部分」や、それよりも支払いの優先順位が劣る「メザニン部分」「劣後部分」などに「切り分ける」ことが可能であり、さまざまな種類や期間のリスクを取ることが可能となります。
当社はリスクとリターンを調整しながら、さまざまなアプローチを検討していきます。

国・地域による独特な規制や商慣習を乗り越える

中嶋:インドではムンバイに新たなオフィスを開設し、現在は駐在員1名と現地採用のローカルメンバー1名を配置しています。今後はメンバーの増員と取引件数の増加を進めていく予定です。
東南アジアにおいては、直近は市場環境を鑑みてやや慎重に進めています。現時点ではインドネシアとシンガポールで事業展開しており、他の国々への展開も検討しています。

渡辺:グローバルビジネスにおいて国・地域によって市場環境に温度差があるのは当然で、当社全体としてのリスクマネジメントということですね。いずれにしろ、FinTech企業への投融資には期待成長が大きいと確信しています。

※2023年12月末時点

【前編】資金調達の世界的逆風に負けない融資のコツ-グローバルな活動が投融資先見極めの精度を高める-
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