環境問題に特化した資金調達方法として注目を集めているのがグリーンファイナンスです。
環境問題への対策に関連する事業者はすでに資金調達額を大幅に増やしており、今後ゼロカーボン社会の実現に向けて、さらにグリーンファイナンスの重要性は高まって行くことが予想されています。
グリーンファイナンスとは何か、具体的にどのような目的にお金が使われているのか、詳しく解説していきます。
1.グリーンプロジェクトに限定した資金調達
グリーンファイナンスとはグリーンプロジェクトに限定した資金調達方法です。
具体的には地球温暖化対策や再生可能エネルギーなどへの投資をするために必要な資金を調達するための債券や借入金です。
グリーンプロジェクトとは環境に配慮している事業ですが、具体的には次のような事業が該当します。
- 太陽光発電所の建設
- 工場のゼロ・エミッション化
- 省エネ製品製造の設備投資
- 電気自動車などエコカーの開発
- 会社や工場などの建築物の省エネ化
- 廃棄物処理プラントの建設
- 二酸化炭素排出抑制を目的とした植林活動
グリーンファイナンスはグリーンボンドとグリーンローンなどに分かれます。
資金を調達したい側発なのか、資金を融資したい側発の案件なのかによってグリーンボンドとグリーンローンは異なります。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
1-1.グリーンボンド
グリーンボンドとは、グリーンプロジェクトに投資する目的で国や自治体が発行する公債、民間企業が発行する社債などの債券です。
債券ですので、目的やクーポンなどを公開して資金提供者を募ります。
グリーンボンドの発行ルールに関しては環境省が詳細に定めており、2017年に「グリーンボンド発行ガイドライン」を設定し、ここでは資金使途がグリーンプロジェクトであるだけでなく、調達した資金が確実に追跡できることや情報開示による透明性の確保も求めています。
そのため、グリーンボンドで調達したお金は確実にグリーンプロジェクトのみに使用されるよう設計されているのが特徴です。
グリーンボンドを発行することによって、グリーンプロジェクトを進めるための資金を確保できるだけでなく、自社のサステナビリティ高度化や社会的支持の獲得を期待することができます。
また、金融機関からの資金調達が難しい企業であってもグリーンボンドであれば環境・社会・企業統治に配慮している企業を選別して投資するESG投資を重視する投資家から資金を集めることが期待できるでしょう。
また、グリーンボンドはフラット35で有名な住宅金融支援機構も取り扱っています。
住宅金融支援機構は「省エネルギー性に優れた新築住宅」を対象とした住宅ローンの買取資金を調達するためのグリーンボンドを発行しており、投資表明投資家として信用金庫や銀行、保険会社などの金融機関が名を連ねています。
環境省が運営する「グリーンファイナンスポータル(旧:グリーンボンド発行促進プラットフォーム)」によると世界のグリーンボンド発行総額は2013年の116億米ドルから2021年には4,108億米ドルと8年で約35.4倍に拡大しています。また、国内でも2014年の337.5億円から2021年には17,790.9億円と7年で約52.7倍の急激な拡大を遂げています。
1-2.グリーンローン
グリーンローンとはグリーンプロジェクトに対する金融機関の融資です。
融資金の資金使途はグリーンプロジェクトに限定され、調達資金の行方は確実に管理されるのでグリーンプロジェクト以外の目的に使用される心配はありません。
実際に、すでにグリーンローンの市場は急激に拡大しています。
2014年には全世界で3億ドルだったグリーンローンの組成額は、2021年には262億ドルと大きな拡大を遂げています。
※参考:環境省「グリーンファイナンスポータル」
2.なぜグリーンファイナンスが注目されるのか
以前から環境問題は注目されていましたが、2015年に大きな転換点を迎えています。
まず、2015年の気候変動枠組条約締約国会議(COP21)ではパリ協定に196カ国が締結しました。
パリ協定では「温室効果ガスの排出を抑制して産業革命前からの気温上昇を2度未満に抑える』という目標が掲げられ、2015年の国連サミットでの持続可能な開発目標(SDGs)が採択されたことも重要です。
SDGsには「17のゴール」が定められていますが、17のゴールの中には「エネルギーをみんなに、そしてクリーンに」、「気候変動に具体的な対策を」、「海の豊かさを守ろう」、「陸の豊かさも守ろう」が含まれており、環境問題はSDGsの中でも重要な課題と言っても過言ではないのです。
そして、2020年1月、国際決済銀行とフランス中央銀行が「グリーンスワン ー気候変動の時代における中央銀行の役割と金融の安定―」を発表し大きな話題となりました。この報告書では、「二酸化炭素などの温室効果によって地球温暖化が進み、世界経済や金融システムに大きな影響を与える可能性がある」、「石炭や石油、天然ガスなどの市場環境や社会環境が激変すると、投資家らによる投げ売りが発生し、結果的に金融危機を招くおそれがある」などが言及されています。
さらに、2021年には国連気候変動に関する政府間パネルのIPCCが、「人間活動が大気・海洋及び陸域を温暖化させてきたことは疑う余地がない」と断言し、2018年の特別報告書での世界平均気温上昇1.5度に達する時期が約10年早まると予測しました。
一連の流れにおいて、日本は2050年までにカーボンニュートラルの実現を掲げており、今後ますます環境問題への対策は重要になります。
環境問題が注目されれば、環境投資に関する資金調達であるグリーンファイナンスは今後一層注目されることになるでしょう。
3.グリーンファイナンスの資金使途や事例・市場原理
グリーンファイナンスで集めた資金はどのように使用されているのでしょうか?
2018年の実績での上位5つは次のようになっています。
- 太陽光発電など再生可能エネルギー
- 断熱性能の向上など建築物の省エネルギー
- 電気自動車の開発・モーダルシフトなどの低炭素の交通手段
- 持続可能な水資源
- 廃棄物処理と農業・森林
このようなプロジェクトはこれまでもこれからも各国で補助金などの公的な資金がつけられることが多い分野となっています。
この点が市場原理の点でもグリーンファイナンスが資金を集めやすい大きな理由の1つです。
投資家にとってもグリーンファイナンスはメリットあり
グリーンボンドの償還原資に公的な補助金などがつけば債券のデフォルトリスクは下がるので、発行体は低金利でグリーンボンドを発行することが可能です。
さらにグリーンプロジェクトが順調に進めばリスクは下がり債券の価格は上昇するので、投資家にも利益を生み出すことができる好循環に繋がります。
ESG投資は企業にとって投資をしやすい分野であると同時に、年金資金のような長期運用を原則とした資金にとっても投資をしやすい分野です。
このような市場理論もあいまってグリーンファイナンスは様々な資金が流入しやすい状況にあり、今後も発行総額を増やして行く流れにあるでしょう。
※本記事は投資勧誘や特定銘柄への投資を推奨するものではありません。
4.グリーンファイナンスの普及でESG投資はさらに加速する(まとめ)
国際的に脱炭素、CO2排出抑制が求められ、さらに日本国内においても2050年までにカーボンニュートラル社会の実現が掲げられる中、環境問題への対応は今後ますます重要になります。
企業もCO2排出抑制が必要になるため、グリーンプロジェクトは今まで以上に増えて行くでしょう。
また、持続可能な社会の実現のため、企業の公共的な使命として、環境問題解決などへ投資するESG投資は伸びていくことが予想され、グリーンファイナンスは企業のCO2排出抑制を達成するための資金調達手段としても、投資対象としても、今後ますます拡大して行くと考えられます。
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