GMOペイメントゲートウェイ(以下、GMO-PG)は、持続可能な社会発展への貢献と持続的な企業価値向上を目指し、サステナビリティ経営を推進しています。重要課題(マテリアリティ)の一つとして位置づけているのが「脱炭素」です。
GMO-PGは、2023年9月期にScope1・2の温室効果ガス(GHG)排出量を実質ゼロとし、2050年に向けてサプライチェーン全体(Scope3)を含めた排出削減にも取り組んでいます※1 。
こうした取り組みが評価され、2025年にはSBTi(Science Based Targets initiative)よりネットゼロ認定を取得、同年にはCDP「気候変動」分野において最高評価であるAリスト企業に選定されました※2 。
今回は脱炭素への取組みの一環として、GMO-PGが購入した「農業由来カーボンクレジット」に着目し、創出の現場を訪問しました。その訪問で見た現場で行われている挑戦と、それを支える企業の関わり方から、脱炭素の新たな可能性を探りました。
その取り組みの実際を、現地を訪れた三浦がレポートします。
※1 【プレスリリース】GMOペイメントゲートウェイ・GMOフィナンシャルゲート、2050年GHG削減目標についてSBTiより「ネットゼロ認定」を取得
※2 【プレスリリース】CDP気候変動レポート2025で最高評価の「Aリスト」企業に初選定
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企業価値創造戦略統括本部
グローバル管理企画部長 兼 ESG推進担当
三浦 義之(みうら よしゆき)
東京大学卒業。大手通信関連企業にて法人営業(金融機関担当)、財務、投資・M&A、新規事業開発を経て、2020年GMOペイメントゲートウェイへ入社。企業価値創造戦略統括本部グローバル管理企画部長に就任。海外事業の会計・財務・人事等を担当。2021年よりESG推進業務を兼務。
GMO-PGが進める脱炭素経営
GMO-PGは、決済を通じたキャッシュレス化やペーパーレス化を推進し、社会全体の脱炭素に貢献してきました。
また、自社の事業活動においても排出削減を着実に進め、2023年にはScope1・2の排出量を実質ゼロとしています。さらに、Scope3についても2030年に向けた目標を掲げ、取引先やパートナーと連携しながら、サプライチェーン全体の排出削減にも取り組んでいます。
脱炭素を自社だけの課題として捉えるのではなく、社会全体へと広げていくことを重視しています。
なぜ農業由来カーボンクレジットに着目したのか
こうした自社努力に加え、より広い視点で社会全体の脱炭素に貢献できる取り組みを検討してきました。その中で着目したのが、農業由来のカーボンクレジットです。
農林水産分野は、日本の温室効果ガス排出量の約4.8%を占めており、そのうち約25%が稲作由来のメタンとされています。水田では、水を張った状態が続くことで土壌中にメタンが発生しやすくなり、この削減は日本の脱炭素において重要なテーマの一つです。
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出典:国立研究開発法人 国立環境研究所「日本の温室効果ガス排出量データ(2023年度 確報値)」
※図の構成は農林水産省「農林水産分野におけるカーボン・クレジットの拡大に向けて」を参照
一方で、農業由来クレジットの創出は決して容易な取り組みではありません。
稲作は天候や土壌条件に大きく左右されるうえ、多くの場合は一年に一度しか収穫がありません。稲作工程の一つである「中干し」の期間を延長することでメタン排出を抑制できる可能性がある一方、タイミングや期間を誤れば、生育や収量、品質に影響が出るリスクも伴います。田んぼや年によって一律に適用できるものではなく、現場での慎重な判断が欠かせません。
今回、農業由来カーボンクレジットを通じた支援に至ったのは、脱炭素と同時に、農業という一次産業の持続可能性を支えることにつながると考えたからです。企業がクレジットを購入することは、温室効果ガス削減への貢献であると同時に、生産者が新たな挑戦に踏み出すための後押しにもなります。
GMO-PGは、農業の現場が抱えるリスクや難しさを理解したうえで、そうしたチャレンジを支える立場で関わることを重要視しています。結果だけでなく、そのプロセスにある挑戦や工夫を社会とともに支えていくこと。それが、農業由来カーボンクレジットに着目した理由です。
持続的な農業体系を支えるフェイガー様
農業由来カーボンクレジットの検討を進める中で出会ったのが、株式会社フェイガー様です。
フェイガー様は持続可能な農業体系の構築を目指し、生産者と協力してカーボンクレジットを創出しています。特徴的なのは、企業による購入が確定する前であっても、生産者へ対価を還元する仕組みを取り入れている点です。これにより、農業現場の取り組みを継続的に支援しています。
また、研究開発部門では、中干し期間の延長にくわえ、バイオ炭の施用による炭素貯留などの取組方法論の拡大や新規方法論への挑戦など、脱炭素型農業の高度化に向けた研究を進めています。あわせて、気候変動の影響を受けやすい農業現場に対応するため、耐候性ソリューションの開発にも取り組んでいます。これらの取り組みを海外へも展開することで、農業の持続可能性をより広い範囲で高めることを目指しています。
今回フェイガー様のご紹介により、新潟県新発田市で稲作を行う・加藤様を訪問し、農業クレジットへの想いや実際の取り組みについて伺いました。
現場を訪ねて ― 新潟県新発田市・加藤様の挑戦
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加藤様は、新潟県新発田市で約17町歩(約17ha、東京ドーム約3.5個分ほど)の田んぼを管理されています。かつては兼業で農業をされていましたが、数年前に専業に転じ、そして2025年1月に農業法人である株式会社FIELD OF DREAMSを設立。最近では有機栽培にも取り組むなど、挑戦を続けられています。
中干し延長に取り組む背景
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加藤様が中干し延長によるクレジット創出に取り組む背景には、気候変動の影響を農業の現場で実感してきた経験がありました。
「稲も植物なので、CO2を吸収する側でプラスだと思っていました。農業に使う機械からCO2が出ているというのは分かっていましたが、水田からメタンが出ていて、しかも温室効果がCO2より高いと知ったときは正直ショックでしたね」
特に近年は集中豪雨や猛暑などの異常気象が増え、米の品質や稲作の工程への影響も強く感じているといいます。実際、一昨年は夏の高温に悩まされたので、次の年に対策をしたらずっと曇天や雨続きで逆をいってしまったとのこと。水田からのメタン排出という課題を抱える一方、農業そのものが温暖化の影響を受けやすい立場にあるという現実もあります。
「米作りは年に一度しかできません。自分の人生であと何回作れるのかと考えると、後の世代のためにも、何かやっておいた方がいいと思いました。中干しはもともと行っている工程ですし、延長するというのであればハードルとしても高くない。まずは登録して試してみよう、という気持ちでした」
実際に取り組んでみて
中干しは、従来から稲作の工程の一つとして行われてきた作業ですが、その期間を延長することには、一定のリスクや判断の難しさが伴います。また、従来は生育状況を見て、ある程度タイミングを調整できたものでしたが、期間を延長するとなると全体の工程を改めて考える必要があります。「自然が相手なので、判断がむずかしいです」と加藤様は語ります。特に2025年は高温・渇水で取り組みを見送った農家も多かったといいます。一方で、取り組んだからこそ得られたメリットもありました。「9月に雨が続いたのですが、中干しをしっかりしたおかげか土が固く、機械が問題なく入りました。こういう副次的な効果もあると感じましたね」
また、周囲の反応については、「新しい取り組みということもあり、反応はさまざまですね。判断が大変だったり、申請が面倒に感じられたりする人も多いと思います。でもフェイガーさんのサポートもありましたし、まずは登録してみるだけでもいいのではないかと思います」と語ります。
農業は天候だけでなく、田んぼの立地や規模、水の状況など様々な要素が絡み合います。そうした中で、多様な事例や知見が蓄積されていくことに期待を寄せているといいます。
「いろいろな状況の人の経験が集まっていけば、判断の助けにもなると思います」
クレジット創出で得た収益については、ケイ酸などの土づくり資材の積極的な施用や無農薬栽培のための除草機械の導入などに活用されているそうです。
「環境への貢献と、収益面のプラス、その両方がある点が魅力です。中干しを結局しなくとも、気候が大きく変わっている今、稲作の手法を見直すきっかけとして、取り組んでみる価値はあると思います」
次世代へつなぐために
取り組みへの想いとして「次の世代から"何もしなかった"と思われたくない」と語る加藤様。「農業はイケてる仕事、この地域もイケていると思ってもらいたい」とお話しされていたのも印象的でした。
「企業がクレジットを購入して取り組みを支えてくれることは心強いですし、それをきっかけとして、こうして繋がれるのは嬉しいですね」と話します。
▲加藤様が使用されている保有設備もご案内いただきました(写真:穀物乾燥機)
持続可能な未来へ向けて
中干し延長は、温室効果ガス削減に寄与する有効な手法である一方、天候や田んぼの条件に大きく左右され、収量や品質への影響も考慮しなければならない取り組みです。生産者は、その不確実性と向き合いながら、難しい判断を積み重ねています。
今回の訪問を通じて、農業という気候変動の影響を強く受ける産業の現場で、脱炭素の取り組みがどれほど繊細な判断の上に成り立っているのかを実感しました。農業由来カーボンクレジットは、単なる排出削減の手段ではなく、そうした挑戦を伴う取り組みでもあります。
中干し延長については、生物多様性への視点など、今後さらに検証が必要な側面もありますが、GMO-PGは、現場が抱えるリスクや難しさを理解したうえで、こうしたチャレンジを支える企業でありたいと考えています。
脱炭素の「結果」だけでなく、その過程にある試行錯誤や意思決定にも目を向けながら、社会とともに歩む形で、持続可能な未来の実現に向けた取り組みをこれからも進めていきます。
用語集
中干し延長
「中干し」とは稲の生長途中で、穂をつける前に一度田んぼの水を抜く作業のことです。稲の根を地中深くにしっかり張らせて倒れにくくしたり、過剰な生育を抑えて品質を安定させたりするために行われてきた、栽培工程の一つです。
「中干し延長」とは、この中干しの期間を通常よりも長く(J-クレジットの方法論では7日間以上)行う取り組みを指します。期間を延長することで、水で満たされた土壌で活発になるメタンガス発生菌の活動が抑えられ、メタン排出削減につながる一方、天候や生育状況に応じた慎重な判断が求められます。
(by あなたのとなりに、決済を 編集チーム)
※本コンテンツ内容の著作権は、GMOペイメントゲートウェイ株式会社に属します。