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バイブコーディングとは?メリット・デメリット、代表的なツールを解説

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バイブコーディングとは、AIに自然言語で指示するだけでソフトウェア開発を進められる新しい手法です。開発スピードの向上や人材不足の解消に寄与するとして注目されており、従来の手書きコードやノーコード開発とは異なる特徴を持ちます。本記事では、バイブコーディングの意味、メリット・デメリット、活用事例、代表的なツールまでまとめて解説します。

バイブコーディングとは

バイブコーディングとは、従来のように開発者が手作業でコードを書いていくのではなく、AIを活用し、自然言語で意図や要件を伝えることでソフトウェアを開発していくスタイルを指します。

開発者がAIに対して「〇〇の仕様のアプリケーションをつくりたい」「〇〇のような機能を搭載したい」といった指示を出すことで、設計や実装を進めていきます。コードの細部を直接書くというよりも、「こういうことを実現したい」というゴールを会話形式で伝え、AIにコード生成や修正を任せるイメージです。

バイブコーディングでは、AIと対話しながら開発を進められるため、開発者の直感やアイデア、雰囲気を柔軟にソフトウェアへ落とし込むことができます。一方で、生成されたコードをレビューし、品質や安全性を担保する役割は引き続き人間が担う必要があります。

バイブコーディングが注目されている背景

バイブコーディングが注目される大きなきっかけとなったのが、2022年11月30日にOpenAI社が公開したChatGPTです。ChatGPTの登場と普及により、多くの開発者が「LLM(大規模言語モデル)を活用したソフトウェア開発」を実験的に行うようになりました。

さらに、2025年2月にOpenAIの共同創設者であるAndrej Karpathy氏がX(旧Twitter)に、次のような投稿を行ったことで、「バイブコーディング」という概念が広く知られるようになります。

「There's a new kind of coding I call "vibe coding"... (後略)」

(訳:私が「バイブコーディング」と呼んでいる新しい種類のコーディングがあります。これは、完全に感覚に身を任せ、指数関数的な変化を受け入れ、コードが存在することさえ忘れてしまうようなコーディングを指しています)

※出典:X(Andrej Karpathy, 2025年2月2日投稿)

この投稿をきっかけに、AIと対話しながらコードを書いてもらうスタイルが「バイブコーディング」として広まりました。2025年11月には「vibe coding」がCollins DictionaryのWord of the Year 2025に選ばれるなど、一時的な流行語ではなく、正式な言葉としても定着しつつあります。

※出典:Collins Dictionary「Word of the Year 2025」(2025年11月6日公開)

従来の手書きコードはカスタマイズ性に優れる一方、プログラミング言語やフレームワークを習得するまでに時間がかかるという課題がありました。他方で、習得コストの低いノーコード・ローコードツールは、柔軟なカスタマイズに限界があるという弱点を抱えていました。

AIを活用したバイブコーディングは、手書きコードとノーコード・ローコードの"いいとこ取り"を目指す新しい開発手法であり、幅広い層から関心を集めています。

バイブコーディングのメリット

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バイブコーディングには、導入・開発面や運用、コスト面など、さまざまな利点があります。ここでは、バイブコーディングのメリットを4つの観点から紹介します。

メリット1:導入・開発面

バイブコーディング最大のメリットは、導入・開発スピードが格段に向上することです。通常、ソフトウェア開発は次のような手順で進められます。

  • 要件定義
  • 設計
  • 実装
  • テスト

従来の進め方では、ソフトウェア開発に数週間から数カ月を要することも少なくありません。

一方、バイブコーディングでは、要件のすり合わせとプロトタイプ作成、実装・テストをある程度並行して進められます。アイデアを自然言語で伝えるだけで試作品を生成できるため、開発スピードの向上が期待できます。

また、認証やCRUD処理、データベース連携など、普遍的に必要となる基本機能をテンプレート化して自動生成しておけば、さらに大幅な効率化が可能です。

メリット2:人材・スキル面

バイブコーディングは自然言語による指示でソフトウェア開発が可能なため、プログラミング言語を本格的に習得していない非エンジニアでも、開発に参画しやすくなります。

たとえば、開発の専門知識がない営業職でも、顧客のニーズをそのままAIに伝えることで、簡易な業務アプリの開発に取り組みやすくなりました。これにより、現場主導の業務改善や、デジタル技術を活用した社内DXの推進につながります。結果として、より効率的で精度の高いサービスを提供しやすくなるでしょう。

メリット3:運用・改善面

バイブコーディングを活用することで、迅速かつ柔軟な試作開発や継続的な改善が可能になります。

たとえば、アプリケーション開発に関する会議の場で生まれたアイデアを、その場でAIに指示して試作品を構築し、すぐに関係者で確認するといった進め方も現実的になりました。改善のための修正や追加要件も、自然言語での指示で反映できます。

フィードバックを基に改善していくリーン開発や、短いスプリントを繰り返すアジャイル開発との相性もよく、より市場ニーズにフィットしたソフトウェアを開発しやすくなる点は大きなメリットです。

メリット4:コスト面

一般に、ソフトウェアやアプリケーションを一から開発するには多額のコストがかかります。専任のエンジニアを採用・育成する必要があるほか、社内に十分なリソースがない場合はシステム開発会社へ外注することになり、数百万円規模のプロジェクトになることも珍しくありません。

一方、バイブコーディングを活用すれば、既存の社員がAIを活用しながら試作品の構築から改善、実装までを担えるようになり、大幅なコスト削減が期待できます。大規模なプロジェクトであっても、少人数チームで開発を進められる可能性があります。

特に、スピードと低コストを重視するスタートアップ企業や中小企業、新規事業の立ち上げ時などにおいて、バイブコーディングは非常に有効な選択肢といえます。

バイブコーディングのデメリット

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バイブコーディングには多くのメリットがある一方で、注意すべきデメリットやリスクも存在します。導入を検討する際は、メリットとあわせて次のような点も把握しておきましょう。

デメリット1:セキュリティ・ガバナンス面

バイブコーディングでシステム開発を行う際は、セキュリティやガバナンス面への配慮が不可欠です。AIが生成するコードには、セキュリティ脆弱性が含まれている可能性があります。

典型的な課題として、次のようなものが挙げられます。

  • SQLインジェクション対策の不備
  • XSS(クロスサイトスクリプティング)攻撃への対策不足
  • 認証・認可機能の欠如
  • APIキーやパスワードなど機密情報のハードコーディング
  • 暗号化処理の不適切な実装

こうしたリスクを軽減するためには、静的解析ツールやSASTの活用、セキュリティ専門のエンジニアによるコードレビューなど、複数の手段を組み合わせてセキュリティ対策を徹底することが重要です。また、AIツール利用に関する社内ポリシーやルールを整備し、ガバナンスを効かせることも欠かせません。

デメリット2:品質・保守性面

バイブコーディングによって非エンジニアでもシステム開発に参入できるようになりましたが、その一方で品質や保守性の観点で課題が生じる場合があります。

バイブコーディングではAIがソースコードを生成するため、「なぜそのような実装になっているのか」を開発者本人が十分理解できないまま運用されるリスクがあります。その結果、障害発生時の原因究明やコード修正に時間を要する可能性が高くなります。

品質管理や成果物の信頼性を損なわないようにするためには、生成されたコードに関する最低限の開発スキルを身につけておくことや、設計ドキュメント・アーキテクチャ図の整備なども重要です。

デメリット3:人材・スキル面

バイブコーディングは便利な一方で、プログラミングスキルの低下や生成AIへの過度な依存といったリスクもあります。特定の生成AIモデルやツールに依存し過ぎると、別のツールに移行しづらくなったり、モデルの挙動が変わった際に業務フロー全体が影響を受けたりする可能性があります。

また、AIが提案するコードの良し悪しを判断できなければ、誤った実装をそのまま本番環境に取り込んでしまう危険もあります。適切にAIをコントロールするためには、AIの基本的な仕組みや、ソフトウェア開発の基礎知識を備えておくことが重要です。

デメリット4:業務プロセス面

バイブコーディングによってシステム自体を開発できても、最終的な責任は人間側にあります。現時点では、社内規程への適合確認や、各種監査対応などを含む業務プロセス全体をAIだけで完結させることはできません。既存の運用フローや承認プロセス上の制約がある点は理解しておく必要があります。

また、長期的には別の課題も想定されます。時間の経過とともにAIが生成したコードが積み重なり、全体構造が複雑化してしまうと、将来的に大規模なリファクタリングや作り直しが必要になる可能性もあります。短期的なスピードと、長期的な保守性のバランスを意識して運用することが大切です。

バイブコーディングのユースケース

バイブコーディングには一部デメリットがあるものの、使い方次第で得られるメリットも非常に大きい手法です。ここからは、バイブコーディングを活用した実際の事例を紹介します。

スタートアップでの導入事例

ReplitのCEOであるAmjad Masad氏は、「自然言語プロンプトだけで、午後の数時間もあればアプリを構築できる時代が来た」と語っています。実際に、Replitのプラットフォームは、AI支援によるコード自動補完と自然言語入力を組み合わせた「バイブコーディング」の代表的な環境のひとつです。

バイブコーディングを活用し、収益化を実現した個人起業家も少なくありません。たとえば、元UXデザイナーのRebecca Beach氏は、AI生成のデジタル製品をオンライン販売することで、月間最大2万ドルの収益を得ていると報じられています。従来は1つの教材やテンプレートを作るのに数週間かかっていたところ、バイブコーディングの活用により制作時間を大幅に短縮し、多数のデジタル商品を展開しています。

※参考:BUSINESS INSIDER「Replit's CEO says anyone can build an app in an afternoon with AI

初心者エンジニアの育成

米スタートアップ企業のNotionでは、AIによるコード生成を積極的に取り入れており、エンジニアがCursorやClaudeといったAIツールを使いながら開発を進めています。2025年8月に公開されたWIREDの記事では、非エンジニアのジャーナリストを招いて2日間の「バイブコーディング体験」を実施した様子が紹介されています。

体験のなかでは、初日にCursorやClaudeなどのAIツールを組み込み、UI修正や機能追加を実践しました。参加者はAIとのペアプログラミング形式で作業を進め、翌日の社内デモで成果物を発表するという流れです。

バイブコーディング体験に参加した記者のLauren Goode氏は、「非エンジニアであっても、実際に動く機能を短時間で実装できることが、自信の醸成と学びにつながった」と振り返っています。AIがコード生成を担い、人間が要件の言語化とレビューに注力することで、学習プロセスを加速できる好例といえるでしょう。

※参考:WIRED「Why Did a $10 Billion Startup Let Me Vibe-Code for Them--and Why Did I Love It?

バイブコーディングに活用できるおすすめツール4選

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近年は、バイブコーディング関連のツールやサービスが多数登場しています。ただし、それぞれ特徴や得意分野が異なるため、複数のツールを比較したうえで、自社に合ったものを選ぶことが重要です。

ここでは、バイブコーディングに活用できる代表的なツール4選を紹介します(料金はいずれも2025年12月時点の公表情報に基づく目安です。最新情報は各社の公式サイトをご確認ください)。

ツール名 料金(月額の目安)/ 主なプラン 特徴 用途別の強み
Windsurf ・Pro:15ドル/ユーザーあたり
・Teams:30ドル/ユーザーあたり〜
VS Codeに近い操作感と独自UIを備え、AIエージェントがコード生成や修正を支援 エンドツーエンドのアプリ開発や、チーム開発でのAI活用に強み
Cursor ・Pro:20ドル/ユーザーあたり
・Teams(Business):40ドル/ユーザーあたり〜
GPT-5.2やClaude 4.5、Gemini 3 proなど複数モデルを切り替えられるAIネイティブIDE コードベース全体の書き換えやリファクタリング、レポジトリ単位の支援に強み
GitHub Copilot ・Individual:10ドル/ユーザーあたり
・Business:19ドル/ユーザーあたり
IDE上でコードの入力候補や関数単位の補完をリアルタイムで提案 既存の開発プロセスに組み込みやすく、既存コードの補完・保守に強み
Replit AI ・Teams:35ドル/ユーザーあたり(年払い時の目安) クラウドIDEとAIエージェントを組み合わせたフルスタック開発環境を提供 ブラウザだけでバックエンドからフロントエンドまで開発し、ホスティングまで行いたいケースに適する

料金や用途別の強みを把握したうえで、自社の開発体制やスキルセットに合ったツールを選択するとよいでしょう。

Windsurf

Windsurfは、VS Codeに近い操作感を維持しながらも独自UIを備え、AIによる強力な開発支援機能によってコーディング作業を効率化するIDEです。開発者の「AIコパイロット」として振る舞う補助機能と、自律エージェント機能を組み合わせている点が特徴で、個人開発からチーム開発まで幅広く利用できます。

※参考:Windsurf「公式ページ

Cursor

Cursor は、VS Code をベースにした AI ネイティブ IDE で、GPT-5.2やClaude 4.5シリーズなど複数の最新モデルを切り替えて利用できます。AI によるリポジトリ全体の解析や、ファイル単位・プロジェクト単位の書き換え、機能追加を対話形式で進められる点が特徴です。日本語サポートも充実しており、国内の開発者から高い評価を得ています。

※参考:Cursor「公式ページ

GitHub Copilot

GitHub Copilotは、チャットやインライン補完を通じて、エディタ上でコードの入力候補や概要を生成するツールです。複数ステップにわたる複雑なコーディングタスクを任せることも可能で、開発者が次に入力すべきコードを予測し、提案してくれる点が特徴です。既存のGitHubエコシステムとの親和性が高く、導入しやすい点もメリットといえます。

※参考:Microsoft「GitHub Copilot

Replit AI

Replit AIは、フルスタック開発機能を提供する多用途なクラウドIDEであり、初心者から上級者まで幅広く利用できます。AIエージェント機能やネイティブなデータベース統合、ブラウザからのモバイルコーディング機能などを備えており、アプリの開発からデプロイ・ホスティングまでを一気通貫で行える点が特徴です。

※参考:Replit「Replit AI

参考:Google Antigravity

2025年には、Google が「Antigravity」という取り組みを発表し、AI が目的に基づいてシステム全体を自律的に設計・改善していく開発のあり方を示しました。これは、対話を通じて人が主導するバイブコーディングを発展させた概念と位置づけられます。

ただし、Antigravity は2025年末時点では試験的な提供段階にあり、一般的な業務システム開発で広く使われている状況にはありません。そのため、実務においては、Cursor や Replit など、現在利用可能な AI コーディングツールを活用するアプローチが現実的です。

※参考:Google「Google Antigravity

まとめ

バイブコーディングとは、AIに自然言語で指示を出すことでシステム開発を行う手法です。プログラミング言語の知識やスキルが十分でない非エンジニアであっても、AIと会話するようにシステム開発を進められる点が最大の特徴です。

バイブコーディングは、試作品の構築や改善のサイクルを大きく加速させ、より市場ニーズに合ったソフトウェアを開発しやすくする可能性を秘めています。一方で、セキュリティ脆弱性のリスクや、品質・保守性、スキル低下・依存といった課題を抱える可能性もあるため、適切なガバナンスとレビュー体制の構築が欠かせません。

近年は、バイブコーディングに活用できるツールが多数リリースされています。複数のツールを比較し、自社の開発体制やスキルセットに合ったサービスを選びながら、バイブコーディングを上手に取り入れていくことで、システム開発のスピードと品質の両立を目指していきましょう。

(by あなたのとなりに、決済を 編集チーム)

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