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決済基礎知識

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「カゴ落ち」の見えない原因とは?EMV 3-Dセキュア(3Dセキュア2.0)とオーソリ承認率の関係

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この記事のポイント

  1. 決済フローでシステム側の判定がカゴ落ちの要因となる構造を解説します。
  2. 承認率のわずかな改善が売上に与える年間影響額を試算します。
  3. フリクションレス率向上の鍵となる、データ連携の具体的な改善策を提案します。

INDEX

そのカゴ落ち、お客様の都合とは限りません

EC事業の改善施策として、「カゴ落ち対策」は常に優先課題のひとつではないでしょうか。商品ページの改善、送料条件の見直し、入力フォームの簡略化など、UI/UX改善は確かに効果的なアプローチです。

しかし、「決済ボタンを押した後」に起きている未完了については、見落とされているケースも少なくないかもしれません。

EMV 3-Dセキュア(以下、3Dセキュア)の導入が進んだ昨今、「以前と比べて何となく売上の伸びが鈍い」「カートへの追加数は変わっていないのに完了数が上がらない」と感じていらっしゃる場合、その背景には決済フローにおけるシステム側の判定が影響している可能性も考えられます。

本記事では、決済手段の中でも特にクレジットカード決済に焦点を当て、カゴ落ちを構造的に分解します。そのうえで、改善に向けた現実的なアプローチを一緒に考えていきたいと思います。

カゴ落ちの構造を分解する:4つのステップ

「カゴ落ち」を一括りに語ることは難しく、実際にはいくつかの異なる層が積み重なっています。お客様が商品をカートに入れ、決済が完了するまでの道のりを、以下の4つのステップで整理してみます。

Step1:UI/UXによる離脱

最も広く認知されている領域です。入力項目の多さ、会員登録の強制、送料や手数料への心理的抵抗、スマートフォン対応の不備など、お客様の購買意欲がインターフェースの摩擦によって削がれる段階です。

この層への対策は多くの情報が整備されており、すでに取り組まれている事業者様も多いことと思います。

Step2:3Dセキュア認証プロセスでの離脱

3Dセキュアの認証過程において、お客様自身が操作を中断してしまうケースです。ワンタイムパスワードの受信トラブル、カード会社の認証画面への遷移に対する不安感、あるいはパスワードが思い出せないといった状況が考えられます。

こちらも「お客様の意思」による離脱という側面がありますが、認証画面の分かりやすさや遷移設計によって、その発生頻度には差が出る場合があります。

Step3:見えないカゴ落ちの正体-3Dセキュア認証判定による未完了

ここから先は、お客様が操作を完了しようとしているにもかかわらず、システム側の判定によって止まってしまう領域です。

3Dセキュアでは、基本的には取引ごとにリスクスコアが算出され、リスクレベルが低・中・高のいずれであるかが判定されます。この判定に際して、カード発行会社(イシュアー)に渡される属性データが十分に連携されていない場合、取引の信頼性を判断する材料が不足し、リスクが高い取引として中リスク以上に評価されやすくなる場合があります。

悪意のある不正利用を防ぐための仕組みですが、本来購入意欲のある正規のお客様が止められてしまう「誤検知」の可能性もゼロではありません。この点は業界全体として継続的に精度向上が図られている課題でもあります。

Step4:オーソリ「判定」による未完了

3Dセキュア認証を通過したとしても、その後のオーソリゼーション(与信照会)で止まるケースもあります。クレジットカードの利用限度額不足、有効期限切れ、カード番号の入力ミスなどが主な原因として挙げられます。

Step3と同様に、こちらもお客様の意思とは関係なくシステム側で取引が未完了になるケースです。

【参考値】決済完了までの「目安」を知る

ここからは、クレジットカード決済における様々なプロセスにおける参考値をご提示します。実際は、業種・商材・時期・お客様層などにより数値は大きく変動しますのでご留意ください。

※参考値は、GMO-PGのオンライン決済サービス「PGマルチペイメントサービス」加盟店様における特定期間の平均値をベースにしています。

「歩留まり」の流れを整理する

クレジットカード決済では、お客様が決済ボタンを押してから完了するまでに、大きく2つの判定ステップを通過します。そして前のステップを通過した件数が、次のステップの分母になります。つまり、各ステップで少しずつ件数が絞られていく「漏斗(ファネル)」の構造になっています。

イメージとしては、以下のような流れです。

クレジットカード決済 実行(100件)
【3DS認証】プロセス
成功:約92件※
(次のステップへ)
離脱・失敗・除外
約8件
【オーソリリクエスト】
承認:約88件※
(次のステップへ)
失敗(限度額等)
約4件
決済完了:約88件
※数値はあくまで全体像を把握するためのシミュレーション(目安)です。

※100件 × 3DS認証成功率92.7% ≒ 92件
※92件 × オーソリ承認率95.7% ≒ 88.0件

プロセス別の参考値一覧

プロセス

参考値

(平均)

分母

補足

3DS認証成功率

約92.7%

クレジットカード決済実行数

イシュアーによるリスク判定を通過した割合

オーソリ承認率

約95.7%

3DS承認数

(前ステップの結果)

与信照会を通過した割合

決済完了率

(概算)

約88%

クレジットカード決済実行数

上記2つを掛け合わせた目安値

ポイント:オーソリ承認率の分母は「クレジットカード決済実行数」ではなく、「3Dセキュアを通過した件数」※です。そのため、3DS認証成功率とオーソリ承認率をそれぞれ単独で見るだけでは、最終的な決済完了率は把握しにくい側面があります。2つの数値を掛け合わせて初めて、「決済ボタンを押したお客様のうち、何割が決済完了しているか」という全体像が見えてきます。
※3Dセキュアをすべての取引にリクエストする場合

また、3DS認証成功率92.7%の内訳として、約50%は3DS認証低リスク判定により追加認証なしで処理されています。残りの約42%はチャレンジ認証(追加認証あり)での承認です。3DS認証リスク判定において、低リスク率が高いほど、お客様の操作負荷が少ない決済体験が実現できている目安ともいえるかもしれません。
※3DS認証における各リスク判定は同時期におけるGMO-PG加盟店様の数値をベースにしています。

決済フロー全体でのファネルについてはこちらからご確認いただけます。

参考試算:承認率の改善はどれほどの意味を持つか

あくまで一例としての試算ですが、数値を現実感をもってとらえるためにご参照ください。

仮定:月間決済試行 1,000件、平均客単価 10,000円のECサイト

状況

3DS認証

成功率

オーソリ

承認率

月間決済

完了件数

(概算)

月間売上

(概算)

現状

92.7%

95.7%

約887件

約887万円

3DS認証成功率が

2ポイント低下

90.7%

95.7%

約868件

約868万円

差額

--

--

▲約19件

▲約19万円/月

(年間▲約228万円)

※月間決済完了件数は「決済実行数 × 3DS認証成功率 × オーソリ承認率」で算出した概算値です。

広告費換算で考えると、月19万円の機会損失を広告で補おうとすれば、同額以上のコストがかかる可能性があります。一方、決済フローの改善は一度の取り組みで継続的な効果が期待できる側面もあり、投資対効果の観点からも検討に値するアプローチといえるかもしれません。

(※実際の影響は事業規模・商材・顧客層によって大きく異なります)

改善へのステップ:情報を整え、精度を高める

では、Step3の「3DS認証の誤判定」による決済未完了を減らすには、どのようなアプローチが考えられるのでしょうか。

カード発行会社(イシュアー)との「信頼構築」としてのデータ連携

3Dセキュアにおけるリスクベース認証の判定精度は、決済システムを通じてカード発行会社(イシュアー)に渡される属性データの質と量に大きく左右される傾向があります。

たとえば、以下のような情報が連携されることで、「正規のお客様による取引らしい」という根拠が積み上がり、追加認証なしでの通過率が高まる可能性があります。

  • カード会員様のお名前
  • メールアドレス
  • 電話番号(携帯・自宅・勤務先)および国コード
  • 配送先住所(請求先との一致・不一致)
  • 購入履歴・アカウント情報(初回購入か、既存顧客か)
  • カート内容の特性(金額帯、商品カテゴリなど)

3Dセキュアの仕様では、100を超える属性項目を連携できるとされています。ただし、すべてを一度に整備することは開発リソースの観点から現実的ではないケースも多いでしょう。

現実的な始め方:実装の優先順位を整理する

まずは、上述したお名前や連絡先といった「会員属性情報」の確実な連携から着手し、その後に「配送先住所の履歴」や「過去の購入実績」といった、より高度な行動データの連携へと段階的に広げていくアプローチが現実的です。

特に一部の国際ブランドでは、こうした属性情報の連携を強く推奨・必須化する動きもあり、これらは決済システム側で自動補完することができない「加盟店様だけが保持しているデータ」です。 どこから着手すべきか、自社の現在の連携状況がどうなっているかは、事業者様のシステム環境によって異なります。まずは「どのデータが送れていないのか」を可視化することが、改善への大きな一歩になります。

まとめ:共に「最適な決済体験」をデザインする

決済は、導入して終わりではありません。お客様の購買行動や不正利用の傾向は日々変化しており、それに合わせて判定パラメータも継続的に見直していく必要があります。

「3Dセキュア導入後からカゴ落ちが増えた気がする」と感じた場合、それはシステムの設定や連携データを見直すサインかもしれません。

GMO-PGでは、オーソリ承認データ・3DS認証データを分析し、EC事業者様の状況に合わせて最適なパラメータや連携項目を共に探る伴走型のコンサルティングを行っています。「数値の見方がわからない」という段階からでも、ぜひお気軽にご相談ください。

決済体験の改善は、CVR(購入完了率)に直結する、事業成長において重要な要素です。まず自社の「見えない壁」を可視化するところから、一緒に始めてみませんか。

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